JaLCDOI 10.18926/66952
FullText URL oupc_016_001.pdf
Author 安藤 美華代|
Abstract  本研究では,低血糖の理解を深めることを目的とし,糖尿病とともに生きる低血糖体験者(84人)の低血糖に関する記述を検討した。その結果,低血糖は,〈食事〉中や〈運転〉中など多様な場面で起こっていた。低血糖は,〈冷汗〉〈震え〉などの[身体感覚],〈恐怖〉〈不安〉などの[感情],〈思考力低下〉など[思考]によって自覚されていた。低血糖直後には,〈ブドウ糖の摂取〉をし〈安静〉にしていた。低血糖体験以降,〈ブドウ糖の携帯〉といった[備え]をし,低血糖の〈予兆〉に注意をはらう[自分への気くばり]をし,〈ストレスコントロール〉による[セルフケア]をしていた。糖尿病とともに生きる人の低血糖をめぐる語りを注意深く聴く大切さが,浮き彫りになった。その上で,その人たち自身の身体感覚,感情,思考へ気をくばる力を育み,低血糖に気づき対処する心理支援の必要性が示唆された。
Keywords 糖尿病 低血糖 低血糖による怖い気もち 自分への気くばり セルフケア
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2018-12-25
Volume volume16
Start Page 1
End Page 8
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66649
FullText URL oupc_020_009.pdf
Author 上地 雄一郎| 小川 紗有美|
Abstract  幼児の親に対する「養育省察機能質問票」(PRFQ)18項目版の日本語版(PRFQJ)が開発された。原版がバック・トランスレーションを通して日本語に訳された。この日本語版に因子分析を行った結果,確信的省察,省察不全,省察的姿勢という3つの因子が抽出された。この3因子に負荷の高い項目から成る下位尺度のα係数は. 80以上であった。この過程で2つの項目がすべての因子に負荷が低いので削除された。この質問票の妥当性確認のために,自己および他者の内面への意識,育児自己効力感,アレキシサイミア傾向との関連を検討した。この質間票で査定される省察機能は育児自己効力感と関連していた。「省察的姿勢」は自己および他者の内面への意識と正の相関を示し,「省察不全」はアレキシサイミア傾向と正の相関を示した。しかし,さらに妥当性の検討を行う必要があると思われる。
Keywords 乳幼児の親 養育省察機能質問票(PRFQ) 日本語版 信頼性 妥当性
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2022-12-25
Volume volume20
Start Page 9
End Page 15
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66638
FullText URL oupc_021_031.pdf
Author 住岡 恭子|
Abstract  本論文では,塚本千秋先生がこれまで相談室紀要に執筆された論文をレビューした。それぞれの論文から,①クライエント・セラピスト双方に流れる時間を意識する重要性,② DV被害者という困難なケースに相対する際に構造を安定させる不断の努力が必要であること,③事例報告において各回のセッションを記述する作業それ自体が臨床研修として有用であること,④助言を行う前にまず目の前のクライエントその人の思いに焦点を当てること,⑤面接の中で思いついた介入を十分吟味すること,⑥試行カウンセリングの臨床現場とは異なる特殊性,⑦精神科医療の動向に,我々心理臨床家が注意を払う必要性,⑧不祥事や倫理的問題を自分ごととして考える重要性,⑨研修における協議が活発になるような架空事例作成の工夫,⑩14回の講義に通底する先生の思想や哲学など,を学ぶことができる。
Keywords 塚本千秋先生 精神医学 臨床心理学
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2023-12-25
Volume volume21
Start Page 31
End Page 38
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66637
FullText URL oupc_021_025.pdf
Author 稲月 聡子|
Abstract  本稿では,私立幼稚園における保育心理臨床業務の一つとして行った園内研修の実践について,その概要とアンケート結果を報告する。園内研修の対象者は幼稚園教諭8名で,新版K式発達検査の概要と,園児の発達検査の結果を共有する形で行った。アンケートでは,<発達検査の理解の深まり><子ども理解の深まり><今後の研修の在り方>の3つの大カテゴリーが抽出され,検査を理解することで,結果を通した子ども理解が深まること,クラス担任それぞれが検査結果を通して子ども理解を深めるのみならず,園全体で検査結果を子ども理解に役立てる視点が重要であることが示された。
Keywords 保育心理臨床 園内研修 発達検査
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2023-12-25
Volume volume21
Start Page 25
End Page 29
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66636
FullText URL oupc_021_015.pdf
Author 安藤 美華代|
Abstract キャリアのある医療従事者は,多様な課題を抱え職場適応に困難を感じ,職場定着しづらい場合があるものの,組織的な支援については,ほとんど検討されていない。そこで本研究では,キャリアのある新任医療従事者へ心理教育“サクセスフル・セルフ”を活用した研修を行い,本取り組みの意義等について検討することを目的とした。対象は,A 医療機関に採用されたキャリアのある新任職員のうち,本研修会に全回参加した14名である。研修会に関するプロセス評価分析を行った結果,各セッションおよび研修全体における本研修の目標到達度もしくは役立ち度および感想が示され,研修1回目から2回目の質問において同僚の輪にうまく入る,困難に打ち勝つ自己効力感,他者との関係性に関する自己効力感の肯定的変化が見られた。以上より,本研修会の有用性が示唆された。
Keywords 新任医療従事者 こころの健康 心理教育 サクセスフル・セルフ
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2023-12-25
Volume volume21
Start Page 15
End Page 23
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66635
FullText URL oupc_021_007.pdf
Author 原 実穂| 東條 光彦|
Abstract  貧困や虐待など,子どもを取り巻く危機状況の課題の一つに,「当事者自身が置かれている状況を問題として認識していない」ことが挙げられる。そこで本研究では,児童生徒の危機と,児童生徒の危機への認知能力について教職員がどのように評価しているか調査した。その結果,教職員の視点から「危機や課題を児童生徒自身が認識できている」と判断されるのは半数以下にとどまっていることが明らかとなった(研究Ⅰ)。さらにそれを踏まえ,認知的発達が十分ではないと推測される小学生を対象に,貧困などの「不利益場面」をどの程度認知できるか架空事例を用いて検討したところ,低学年ほど危機について正しい認識ができていないこと,危機察知が低い傾向にある児童は,他者へ援助を求めることの必要性を感じにくいことが示唆された(研究Ⅱ)。
Keywords 心理・社会的危機 援助要請志向性 危機認知 早期発見 架空事例
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2023-12-25
Volume volume21
Start Page 7
End Page 13
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66634
FullText URL oupc_021_001.pdf
Author 塚本 千秋|
Abstract  よい臨床家とはどのような臨床家だろうか。2023年夏,当大学院の修了生たちに講話を依頼されたので,その機会をとらえて,よい臨床家について考えてみた。考える素材を得るために,最近,関心を集めている生成型人工知能ChatGPTに「よい臨床家とはどのような臨床家か」という問いを投げかけたところ,間違いとはいえないが,とても違和感の強い回答を得た。本稿では,その違和感に焦点を当てながら,筆者の考える“よい臨床家”を紹介したい。
Keywords 臨床家 ChatGPT 臨床家の良し悪し 臨床家の成長
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2023-12-25
Volume volume21
Start Page 1
End Page 6
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66633
FullText URL oupc_020_031.pdf
Author 稲月 聡子|
Abstract  本稿では,筆者が行ってきた私立幼稚園における発達相談の実践について改めて振り返り,保育心理臨床において心理職の果たす役割について整理・検討を行った。また,幼保小連携をふまえた今後の活動の方向性についても検討した。
Keywords 子育て支援 保育心理臨床 幼小連携
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2022-12-25
Volume volume20
Start Page 31
End Page 35
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66632
FullText URL oupc_020_017.pdf
Author 塚本 千秋|
Abstract  心理職を志す学生に精神医学を教えることは,自明なことのように思える。しかし,精神医学は世間の人が想像するほど安定した学問ではなく,またその実践としての精神科臨床も,定式化されているとは言えない。これを教育という視点で考えると,教える人間が「学問として流動的」「実践には疑問も多い」などと言えば,すでにこの領域に関心を持っている学生には有益かもしれないが,それほどでもない学生は不安を抱くだろう。「それなら,最低限たしかなことだけ教えればよい」と読者は思うだろうが,それができるなら苦労はしない。本稿では,これまで筆者が実践してきた講義の概要を紹介しながら,筆者の課題意識を検討する。
Keywords 心理職養成 臨床心理士 公認心理師 精神医学教育
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2022-12-25
Volume volume20
Start Page 17
End Page 21
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66631
FullText URL oupc_020_001.pdf
Author 上地 雄一郎|
Abstract  本研究では,マインドフルネスを測定するために開発された「サザンプトン・マインドフルネス質問票Southampton Mindfulness Questionnaire:SMQ」の日本語版(SMQJ)を作成し,初段階の信頼性と妥当性の検討を行った。SMQJを構成する16項目のα係数はα=.73で,まずまずの信頼性が得られた。SMQJと日本語版MAASとの相関係数はr=.27と,有意ではあるが低く,これはMAASが測定する傾向とSMQJが測定するものとの相違による結果だと思われた。SMQJと,Galexで測定されるアレキシサイミアとの相関については,SMQJと「体感・感情の認識不全」がr=.30の有意な相関を示したが,「空想・省察の不全」とは無相関であった。また,SMQJの因子分析の結果,2因子が抽出されたが,この因子分析によってSMQJの項目の1つについて日本語訳を修正する必要性が示唆された。
Keywords サザンプトン・マイドフルネス質問票 日本語版 信頼性 妥当性
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2022-12-25
Volume volume20
Start Page 1
End Page 8
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66630
FullText URL oupc_018_007.pdf
Author 新庄 加奈| 東條 光彦|
Abstract  本研究では,教育実習生における感情労働の継時変化を把握するとともに,それが精神的疲労感とどのように関連しているかについて明らかにすることを目的とした。教育実習生140名を対象とし,実習1週、4週の終期に感情労働とPOMSによる精神的疲労感の測定を行った。その結果、感情労働は「指導的感情表出」において上昇し,POMS得点では,いずれの下位尺度でも得点の低下を示した。また,POMS得点と感情労働の関係では,「自己感情表出の操作」が2回の調査を通じ,一貫してPOMS得点に影響していた。これらをうけ,実習生の感情労働の獲得,その心理的役割についての教育の必要性について検討が行われた。
Keywords 感情労働 精神的疲労 POMS 教育実習生
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2020-12-25
Volume volume18
Start Page 7
End Page 13
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66629
FullText URL oupc_017_007.pdf
Author 桑原 晴子|
Abstract  幼児の異文化適応のプロセスに焦点を当てた心理臨床学的研究はほとんど見当たらないが,グローバル社会における幼児の異文化適応における心理支援を考える上では,検討が必要である。本研究では事例研究法を用い, 1人の幼児の異文化適応のプロセスを意識の発達という視点から検討を行った。その結果,集団の意識と個の意識という対極的な意識を統合し,また国や民族といった表層の差異を越えた,人間としての普遍性の次元でつながりを確立することで,幼児の異文化適応が深化していると考えられた。また,その異文化適応の心理支援の際に配慮すべきことについて検討を行った。
Keywords 異文化適応 幼児 個の意識 集団の意識 普遍性の次元でのつながり
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2019-12-25
Volume volume17
Start Page 7
End Page 15
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66628
FullText URL oupc_016_037.pdf
Author 山下 明子| 上地 雄一郎|
Abstract  幼少期に安定した愛着が形成されなかった子どもは,さまざまな心の問題を抱える可能性がある。しかし,児童期の愛着についての知見はまだ浅く,愛着に問題を抱える子どもに対する適切な支援がなされているとは言い難い。そこで本研究では,BowlbyとAinsworthによる愛着の定義にできるだけ忠実に,児童期の安定型,アンビヴァレント型,回避型の愛着パターンを測定する質問紙尺度を作成することを目的とした。中・四国の小学校5校のうち、5~6年生に作成した質問紙を実施した。その結果、安定型、回避型、アンビヴァレント型の3因子が抽出された。その後の検討で、信頼性・妥当性が確認された。また、5つのクラスターからは、「回避ーアンビヴァレント型」の児童のリスクの高さが示された。
Keywords 愛着 質問紙尺度 児童用愛着パターン尺度
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2018-12-25
Volume volume16
Start Page 37
End Page 44
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66627
FullText URL oupc_016_027.pdf
Author 藩 艶麗| 上地 雄一郎|
Abstract 本研究では,メンタライジング能力を測定するために,対人葛藤場面についての「メンタライゼーション査定面接改訂版」 (Mentalization Assessment Interview-the Revised Version; MAI-R) を作成した。MAI-Rは高い内的整合性を有しており,2名の評定者の評定同士も高い相関を示した。また,MAI-Rの妥当性については,MAI-R総得点は,愛着回避とは低い負の相関を示した。そして,MCQ-30によって測定された「心配への注目」および「思考の制御」とは有意な正の相関を示した。共感との関連については,EESRで分類された共感の4タイプの間でMAI-Rの得点に有意差は認められなかった。つまり,MAI-Rは,高い内的整合性および評定者間信頼性を示したが,妥当性が充分に証明されたとは言えない。
Keywords メンタライジング能力 メンタライゼーション 対人葛藤
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2018-12-25
Volume volume16
Start Page 27
End Page 35
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher
JaLCDOI 10.18926/66626
FullText URL oupc_016_009.pdf
Author 井上 亜希| 上地 雄一郎|
Abstract  本研究では,メンタライジング能力を簡便に測定するメンタライジング能力尺度を作成した。因子分析の結果,5因子27項目が抽出された。第5因子に負荷する項目群を除いて一応の内的整合性があることが確認された。因子ごとに不統ーな結果も見られ,下位尺度ごとに得点の高低の意味が異なり,ポジティブな意味とネガティブな意味の両方をもっていると思われる下位尺度もみられた。下位尺度のα係数が第1因子を除いて.80に達しておらず,第5因子は.62であることから,項目内容を再検討し,項目数を増やすことも必要であろう。さらに,回答方法を変更することも検討課題である。一部使用した尺度において明確な関連がみられなかったこともあり,新たな尺度や他の尺度との関連から妥当性を検討することも必要であると考えられた。
Keywords メンタライジング メンタライゼーション 質間紙尺度 愛着
Publication Title Bulletin of the Okayama University Psychological Clinic
Published Date 2018-12-25
Volume volume16
Start Page 9
End Page 16
ISSN 2758-6138
language Japanese
File Version publisher