アメリカ合衆国においては,障害者教育改善法(IDEA)に基づいて,障害のある子どもの教育的な決定に関
する親の参加が保障されている。一方で,その具体的な運用にあたっては,親と学校との対立が生み出されており,
訴訟に発展するケースもみられている。本稿は,IDEA によって保護されている親の権利をめぐって,親の過失
を認定したオハイオ州北部地区連邦地方裁判所による判決(Horen v. Toledo School District., 113 LPR 48072 (N.D.
Ohio 2013))を中心にとりあげ,とくに個別教育計画の立案ミーティングにおける親の参加の観点から,対立の
構造と論点を整理した。連邦地方裁判所は親と学校区とのやりとりの分析から,「これ以上露骨な参加の拒否は
容易に想像できない」と述べ,学校区からの働きかけに対して「やめてくれ」と拒絶した親の責任を全面的に認
定した。最後に,本裁判の結果をふまえ,今後における親と学校との協力体制の重要性を指摘した。