同じ歌詞でも音楽が異なるとどのような印象を持つのかという点に着目し,ゲーテの詩を元にした5 人の作曲家による《野ばら》を取り上げ,楽曲分析と印象評価の比較を行った。その結果,それぞれの楽曲を特徴付けている音楽的特徴,男声女声という表現媒体(音域)との関連を主にして,その曲の印象を評価していることが読み取れた。また,歌詞に関わらず,音楽的特徴に基づいてある程度共通の印象傾向を持たせる機能があることもわかった。さらに,曲の嗜好や「歌いたい」気持ちに関連する特徴については,身体的・心理的な感覚を想起しやすい特徴が,「歌いたい」気持ちを喚起する傾向にあること,声の表現の質に関する特徴や,歌唱の技術的な難易度の如何によって,歌唱への興味関心が影響を受ける傾向があることも示唆された。