保育者が自らの保育の中で経験してきたことから,何に気付き,記憶し,どう活かしてきたかは,保育の質と
保育者としての成長に影響する。本論は,保育者が自伝的記憶として,何を気付き体験として捉え,記憶してい
るかを調査し,保育経験年数によるその特徴を分析する。具体的には,保育者に,何に対して気付きを得たか等
について自由記述を求め107 名分のデータを得た。経験年数により,初任保育者,中堅保育者,熟練保育者に分け,
それぞれの気付き体験の特徴を明らかにした結果,どの経験年数の保育者も同様に「保育者の姿勢」に関する気
付き体験が最も多く,続いて「子どもの心的状態や行動」に関するものが多かった。また,中堅,熟練保育者に
なると,表面に表れない子どもの思いへの気付きが多くなっていることが明らかになった。さらに,熟練保育者は,
「保護者と保育者のつながり」「子どもと保育環境」等,園生活全体に気付き体験を広げていることが示唆された。