本稿では,教員養成の比較発達史研究の一環としてフランス第三共和政初期の初等教員養成にかかわる思想と制度に,同時期のドイツ(プロイセン)から如何なる影響関係が見られたか,個別事例的に検討した。その結果,第三共和政初期における教育改革のキー・パースンとなる人物を通して,ドイツを含む近隣諸国から試補教員制度が導入・実施されたことが確認された。また,同時期の教員用マニュアルや教員志願者用テキスト(教育学)は同じキー・パースンが紹介した「直観的方法(直観教授)」を忠実に解説しており,この時点でフランスもまたペスタロッチ主義(開発主義)の強い影響を受けていたことが確認された。