本研究は,政策選択学習の原理を応用した中学校社会科授業の単元開発の方法を,領土問
題をめぐる日本の外交政策を取り上げた単元の開発を通して明らかにしようとするものであ
る。政策選択学習は,原理的には探求型の学習や意思決定学習を基盤とし,政治課題を探究
したうえでその解決に向けていくつかの選択肢を提示し,それらを比較・検討させたうえで
より良い政策決定を促そうとするものである。今回,領土問題をめぐる日本の外交政策に関
して,他国との敵対を辞さない強硬策か,それとも相手国の意見も聞き平和に解決すること
を目指す協調策かという軸と,日本単独で問題の解決を目指そうとするか,他国と連帯して
解決しようとするかという軸で4つの政策を設定し,それらの影響と結果を比較しながら,
生徒に意思決定を迫った。開発単元は,大人でも解決困難な問題についても,争点を把握し
たうえで子どもなりの判断を求めていくことが可能であることを示している。