本研究は,西田幾多郎門下の哲学者で近代の可能性を追求した文明批評家,土田杏村の教
育観と教育目的論を考察し,それとの関連において主著の一つである『道徳改造論』を対象
に,昭和初期の修身教科書批判の内実とその特質を明らかにする事を課題とする。
第一報では,「人格の自律」に焦点化された杏村の教育に関する議論が,道徳論の基底に
あることを明らかにした。第二報の本稿では,『道徳改造論』を主な資料として,明治以来
の教育を国家の絶対的権力による強制的教育であると理解していた杏村が,昭和初期の小学
修身書をどのように批判し,いかなる改造の道筋を提示したのかを考察した。