ドイツの職業教育諸学校の一つ,専門上級学校に焦点を当て,新旧物理教科書の比較考察に基づき,物理教育の変遷を明らかにしてきた。技師学校,高等専門学校の専門大学への昇格とともに,準備校として,職業上構学校などから創られてきた40年程度の伝統を有する専門上級学校用の新旧物理教科書において,物理教育の概念・構造が大きく異なっている。旧では,力ではじまり電気などを経て原子でおわるが,新では力と電気だけという範囲に違いがあること,重複(共通)している索引の割合は,旧では5%程度,新では30%程度であることなどは,学校の創生期(多様な生徒)からの隔りなどを経てきた,独自性の確立であり,また,単位系移行からの完了などが背景といえる。