Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

朝顔の開花機構に関する研究 (第1報)開花と浸透圧との関係

安田 勲 岡山大学
安井 公一 岡山大学
発行日
1967
抄録
著者等は朝顔(スカーレットオハラ)の蕾に前夜電照(60ワット以上)を加えると花が咲かなくなることをしばしば報告した.この不開花になる現象を生理学的に究明するため,1965年から1966年にかけていろいろな実験を試みてみた.それらの実験というのは,(1)蕾の汁搾の氷点降下法による,浸透圧の測定,(2)原形質分離法による表皮細胞の浸透圧の測定,(3)蕾の搾汁中の還元糖量の変化の測定,(4)開花に伴なう表皮細胞の大きさの変化の検査及び(5)蕾や花の生体重及び乾物重の変化の測定などであった.実験の結果は次のようであった.(1)氷点降下法においては,電照をしたものも,しなかった区も浸透圧は蕾の発育に伴なって低下するが,午前3時以后からは電照区の浸透圧が標準区より高い値を示していた.(2)表皮細胞における原形質分離法による浸透圧の値は,標準区の場合は内側の花弁のほうが外側の花弁よりも大である.しかし,電照区のほうは,初めはやはり内側の浸透圧が外側より高いけれども午前1~3時ごろからは両側とも等しくなる.つまり不開花のままになった.(3)蕾の搾汁中の還元糖量は標準区では開花の進むにつれてだんだん減少するが,電照区では一晩中ほとんど変化が見られなかった.(4)蕾内の細胞の長さや巾は標準区では開花のすすむにつれて内外側ともしだいに大きくなるが,電照区のそれはそれほど大きくならず,しかも中途で止ってしまった.(5)蕾の生体重,乾物重及び含有水分量は,開花の進むに伴っていずれの区も増加するが,開花の終る頃には自然開花区の生体重は,電照区よりやや大きく,乾物重は電照区よりやや小さくなった。
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029