本研究では,造形行為の過程で制作者が経験する学びを分析し考察する視点について,特に,工芸制作に関連した文献の調査により検討することを目的とした。そのため,制作者自身の見方,感じ方,考え方と造形物を共に形成していく工芸の制作過程としての金子賢治の「工芸的造形」と,制作者が自身の変化と素材の変化を一体とした造形行為を連鎖させていく学びの過程としての橋本真之の「造形的自己変革」と,人間の「自己」が生み出されていく過程としてのヴァイツゼッカーの「ゲシュタルトクライス」について文献調査した。これにより,制作者自身の見方,感じ方,考え方と造形物を共に形成していきながら,制作者自身の変化と素材の変化が一体となって生じる造形行為の過程において,自らの「自己」を生み出し続けていく制作者の学びを分析し考察する視点をまとめた。今後は,本研究の成果を検証するため,本研究で示した視点に立つ事例研究の実施を課題とする。