岡山大学大学院教育学研究科研究集録
Published by 岡山大学大学院教育学研究科

ISSN 1883-2423

Kohutの自己愛性パーソナリティ障害論の批判的検討

上地 雄一郎 岡山大学 Kaken ID
発行日
2009-06-25
抄録
自己愛性パーソナリティ障害に関するKohutの見解を,彼と対立した Kernbergの見解,DSM-Ⅳの診断基準,自己愛性パーソナリティ障害の二類型論などと関連させて論じた。その結果,Kohutの言う自己愛性パーソナリティ障害を「自己愛の障害のある患者」と呼び換え,DSM-Ⅳによって診断されるそれとは区別したほうがよいという丸田(1995)の見解が妥当であることを主張した。自己愛性パーソナリティ障害に関するKohutの見解の問題点として,まず,Kohutが誇大自己と呼んだ自己発揚的傾向と,防衛的誇大性とは区別すべきであることを指摘した。次に,自己愛性パーソナリティには理想自己と現実自己の乖離がみられるというBroucek (1982,1991)や岡野(1998)の見解と,自己愛性パーソナリティは高い理想を持つ人ではないというKohut(1971)の見解のずれについて,これは理想についての両者の理解のずれから生じているのではないかということを示唆した。
ISSN
1883-2423
NCID
AA12338258
NAID
JaLCDOI