Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

斐川町地区用水路の住民による水辺環境機能の評価

Ota, Seiroku
Nagahori, Kinzo
Maekawa, Toshikiyo
Abstract
用水路にどのような水辺環境機能があるかを調べるために,住民に対してアンケート調査を行った.アンケートは回答者の属性と用水路の機能項目の2つに大きく分けて質問し,結果をそれらの問のクロス連関を中心として分析した.また全部で18個の機能項目に関して,因子分析を行い,今回の調査では,住民は水辺環境に対して,景観整備機能,自然-親水機能,および生活的な利水-管理機能の3つの主要な機能要因を意識していることがわかった.また,これらの要因はアンケート結果の解釈の段階で,各機能項目に実際的な影響を与えていることが確められた.次に得られた主要な結果と,それらに対する整備の方針を述べる. (1)物を洗ったり,水を汲んだりする事が用水路利用と強く結びついている.農業従事者の58%,「水路へ毎日のように行く」人々の53%が「物を洗う」ことに「非常に機能している」と高い評価を与えた.農業地域では用水路の水辺環境機能として,「物を洗う」ことを重視し,水質の浄化をはじめとして,洗い場の数や配置等の具体的な問題では住民の意見を取り入れた整備計画が求められる. (2)用水路改修直後の原鹿地区では,「美観」,「水質浄化」および「危険管理」等の項目で他の地区に比較して,高い評価が与えられたが,一方「物を洗う」ことでは,やや低い評価であった.また「自然の生物に親しむ」や「散水」などの自然-親水機能では住民の評価は他の地区に較べて低調であった.水路の改修,新設に当たって,岸辺の構造やデザインに配慮を行い,自然-親水機能や水路へのアクセスが失われないようにすることが大切である. (3)砂川用水路では上流地区と下流地区で意識の違いが見られた.特に,下流部では,水路までの距離が「0-5m未満」の近距離居住者の中の30%以上の人が,「水質浄化」が「機能していない」と低い評価を与えた.今後は農業用水にとっての水質基準とともに,水辺環境に対する水質基準などの検討も必要である. 最後に,本報告では住民が自然-親水機能に対して,一定の強さの潜在的な関心を抱いている事を確認したが,現状では生活的な利水機能に較べて,自然-親水機能に対する評価は低調であった.ただ周りの丘陵的な自然に恵まれた出西高瀬川地区では自然-親水機能が比較的よく保全されていると考えられた.今日,自然への無関心や環境の悪化のために,水路から水辺環境が失われていくことが多い.したがって自然-親水機能に対する保全的で,計画的な整備が今後の重要な課題としてあげられる。
Keywords
斐川町地区用水路
水辺環境機能
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029