‘ピオーネ’の結実不良の原因である胚のうの発育不完全と雌ずい中での花粉管の伸長停止がどのような栄養やホルモンの過不足によるかを知るために,種々の組成の培地で花蕾を培養し,その影響を結実の良い‘マスカット’と比較した. NITSCH('51)の培地中の無機塩あるいは窒素濃度を2倍以上に高めるにつれて両品種とも子房は大きくなったが,‘ピオーネ’ではそれらの子房内での胚のうの発達と花粉管の子房組織内への伸長が非常に劣った.これとは対照的に‘マスカット’では区による大きな差はみられなかった.ショ糖の添加量は,両品種とも5%区で子房径がもっとも大きかった.‘ピオーネ’では10%以上の区では胚のうの発達が抑えられたが,‘マスカット’ではそのような傾向はなかった. ショ糖を10または20%にすると,花粉管の伸長が両品種とも著しく促された. 培地中にNAA,GA,BAを0.01-10ppm添加しても,両品種とも子房の大きさに大きな影響はなかったが,胚のうの発達はNAAとGAの添加で,花粉管の伸長はいずれのホルモンの添加によっても抑制された.この抑制は‘ピオーネ’より‘マスカット’の方がより低濃度で影響を受ける傾向がみられた. 以上の結果から,‘ピオーネ’では開花前の花蕾に豊富な栄養,とくに窒素が供給されると有核果の結実を困難にすると考えられる。