放射線によるいわゆる Steile Male Techniqueの基礎的研究のためにアズキゾウムシに137Csを照射する2・3の実験を試みた. (1)137Csによる不妊実験に用いる成虫は,それが蛹の時期に雄では8000γ,雌では6000γを照射すれば充分であることがわかった. これらの成虫外見も,活動性も対照区より得た成虫と大差がないが,照射後の羽化率が低くて約50%,その寿命,特に雌のそれが射照区より幾分短かいという缺点があった. (2)雄成虫と雌成虫を交尾産卵させた後で,相手の雄を別の雄と交換して交尾産卵させる実験においては,はじめ正常なもの相互の交尾後3日目にその雌に別の正常雄を交尾させると,その後の産卵数は,はじめの交尾より得られる産卵数より少なく,発育率は低い傾向を示した. これを対照区として,はじめ処女雌と不妊処理雄とを交尾産卵させ,3日目にその雄を正常雄と交換して交尾産卵させると,その後の産卵数は対照区のそれと大差がないが,発育率は明らかに対照区より低い値を示した. 次に処女雌が正常雄と交尾後3日目にその雄を処理雄と交換して交尾産卵させると,その後の産卵数も発育率も対照区のそれらと比べて大きい相違がなかった. したがって処女雌が処理雄と交尾すれば,その雌が後で正常な雄と再び交尾しても,なお不妊効果が期待されるけれども,正常な雄とすでに交尾した雌が,後で処理雄と交尾しても不妊効果はあまり期待できない. 処女雌が処理雄と交尾産卵した後3日目に,放射線処理後かなり目数が経過した別の処理雄と交尾した場合,その後の産卵数も少なく,発育率も低い値を示した. (3)正常な雄と雌とその何倍かの不妊処理雄または雌を所定の実験環境の中で交尾競争させる実験において,処理雄:正常雄:正常雌の比が30:5:5,すなわち6倍数の処理雄を用いたときの不妊効果が最も高く,次代成虫の発生数を約50%におさえることができた. 処理雌を用いた実験では,その比が40:5:5,すなわち8倍数の処理雌を要した。