ハッカ3種の核学的研究を行ない,また,稔性を調査して,次の結果を得た.1.Mentha Requienii BENTH. は,かってRUTTLEが観察したように,筆者の材料でも,2n=18であった.2.Mentha Gattefossei MAIREでは,根端で,2n=48を,また,PMCのMIに24IIを数えた.3.Mentha tomentosa D'URV.には2系統あって,一つは,2n=48,PMCのMIに24IIを示した.他は,前掲の系統中に混在し,完全不稔性によって,それと区別できたのであるが,2n=36を示した.この系統では,FMCが単期に退化を起すために,減数分裂の観察が不可能であった.4.2n=36のM. tomentosaを除けば,上述3種は,いずれも,稔性は完全で,細胞学的にも安定した種であった.以上の結果は,ハッカ属の基本染色体数は12であるという筆者等の持論を支持する.しかして,M. Requieniiは,これに合致しない唯一の種であるが,本種は,形態的にも,他のハッカと可なり違っているので,それらと,基本染色体数を異にすることもありそうだと考えられる。