Studies in Cultural Symbiotics
Published by Graduate School of Humanities and Social Sciences, Okayama University

Korean Words in 'Sonkai Tokai Nikki'

Published Date
2007
Abstract
「尊海渡海日記」は、天文8年(1539年)広島大願寺の僧尊海(?~1549)が一切経を求めて朝鮮に渡った時の紀行文である。本文は、尊海が朝鮮で得たとされる八曲一双の「野立屏風」(各曲102.8cm×54cm)の裏面に記されている(表は瀟湘八景図)。漢文体で書かれており最古の朝鮮機構であるとされる。本屏風は、宮島大願寺蔵(大願寺文書314号文書)の国の重要文化財であるが、現在は東京国立博物館に移管されている。現物の閲覧はできないが、レプリカが福岡市立博物館、広島県立歴史博物館、大願寺にある。本紀行は、従来より、歴史学では中世の日朝交渉に関する重要な資料として取り上げられており(中村(1965)、武田(1981)、井上(1992)等)、また屏風表の瀟湘八景図は美術史の面でも言及されてきた(脇本(1934)、武田(1963)等)。いっぽう、本紀行の本文には、尊海が自ら記したとされる仮名書きの朝鮮語が32例見られる。これについては、歴史学の観点から中村(1965)が一部言及しているものの、言語学の観点からの考察は従来ほとんどなされていなかった(辻(1997))。本稿では、この仮名書き朝鮮語を取り上げ、これを言語史の観点から考察しようとするものである。原文と読み下し文を掲げたのち、仮名書き朝鮮語32例について、写音表記や音韻史の観点から検討し、その言語的特長、とくに中期朝鮮語との対応関係を中心に考察する。
ISSN
1880-9162
NCID
AA11823043
NAID
JaLCDOI