Journal of Okayama Medical Association
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Supplementary Notes on the Blood Gas in Cases of Manic-Depressive Psychosis

Kosaka, Mutsutosi
Nozaki, Kimiaki
67_991.pdf 671 KB
Published Date
1955-05-31
Abstract
血液瓦斯像の変化は,分裂病に特異というわけでなくて,躁うつ病に於ても矢張り種々の変化を見せた.すなわち躁状態にあつては特に炭酸出現量が少いこと, R. Q. <0.9なること,脳内炭酸分圧の差が4mm以下であること,血液pHに変りがないこと,炭酸含有量,予備アルカリは寡いものと正常値が半々であること等である.又うつ病の瓦斯像は,脳血炭酸含有量,炭酸出現量が寡いこと, R. Q. <0.9なること,圧差が4mm以下であること,予備アルカリは低常半々であること, pHには変化は少いこと等々である.これで分る通り,躁状態とうつ状態の瓦斯像は極めてよく類似しており,両者の間で異るのは唯脳血炭酸含有量の少いのがうつ状態の時目立つている位のもので,取上げる程の相異がない.躁うつ両端の状態に対する瓦斯像が極めてよく似たものであるということは,この両者が状態像の上では異つているが,それは単に感情表出の外面的な相違で,それの根本的な生物化学的な面に於て相違なく,その近似性が瓦斯像の上に現われているものであれば極めて興味深いことであろう.尚躁うつ病を一つ疾患単位として,分裂病との相違を取上げてみよう.一般に躁うつ病では炭酸出現量の少いことが目立ち, R. Q. <0.9である点,及びpHに変化が見られぬことの3つであろう.炭酸出現量が少く, R. Q. <0.9の2項は,数々分裂病急性期に於て見るものであつたが,分裂病ではかゝる場合非常に数々予備アルカリの減少に加えて,普通pHの酸性側への移動が見られるのであつた.躁うつ病では,これらの協同的変化が見られず,いわば悪化指標*の分離が見られるのであつて,これが分裂病と躁うつ病とが発生病理の上で異なる部分を反影しているものと考えられないだろうか.さて,これらの悪化期瓦斯像は,寛解期に於て何れも回復を見せ,分裂病瓦斯像の際に設けた正常規準値を獲得するに至つて落着くのである.かくして瓦斯像は,躁うつ夫々の状態の変化と共に動き,その病像を反影するのである.
ISSN
0030-1558
NCID
AN00032489