本研究の目的は、近年増加傾向にある日本留学を経て日本企業に就職した台湾人元留学生を対象とし、職場における自己の存在意義と自分の職場の意味をどのように捉えているかを質的な分析を通して解明することである。就労開始後10 年以内の台湾人元大学院留学生9 名を対象に半構造化インタビューを実施し、KJ 法を援用し分析を行った結果、自己の存在意義計29 件、職場の意味計31 件が抽出された。この結果から、本調査対象者は、多文化就労場面における元留学生である自己の存在意義を見出せるケースと見出せないケースが拮抗していること、また、自分の職場を概ね肯定的に捉えているものの、同時に二律背反的な見方が一個人の中に併存することが示された。