本稿では,音楽授業において,「指揮者が歌うこと」が,教師の指揮表現や生徒の歌唱にどのような変化をもたらすのか検討した。このために,教育学部の合唱授業で,学生3名を学生指揮者として合唱を2回実施し,1回目の合唱終了後,指揮者に対して歌唱レッスンを行った。歌唱レッスンをする前と後の指揮表現に対して,合唱者と指揮者にアンケート調査を行い,指揮者の歌唱が指揮表現及び合唱者に及ぼす効果と影響について考察した。その結果,「指揮者が歌うこと」によって,指揮や合唱で以下のような変化をもたらすことが示された。①自然に,手の動き,口元,表情等,身体全体の動きによる指揮が生まれること。②指揮者の意図する音楽的な表現がより的確に伝わること。③合唱者が音楽の流れに乗りやすくなり,楽しさをより一層感じるようになること。これらのことから,教師は音楽授業の中で自らが歌い,児童生徒たちと歌を共有することで,自然で歌いやすい指揮が生まれ,それにより児童や生徒たちから一層豊かな音楽表現を引き出すことが期待できる。