シュライエルマッハーはドイツ市民社会形成期に求められた新しい教師の養成に専心しつつ,国民の学校に必要な教授学理論を構築した。そして,教師の手引きでもある彼の主著『教授指針』における教育目標には,自らを熱烈な信奉者と言わしめたペスタロッテの思想ともう一人の「教師」であったシュライエルマッハーの影響が存在している。ディースターヴェーク教授学をこの新たな角度から再解釈することで,我々は,急激な世界変化から生じる教育と学校そして授業-の要求に対応する,現代の教育学理論・教授学理論のあり方を検討することができるのである。本論は,このような問題意識のもと,ディースターヴェーク教授学の現代的意義を追究する試みの端緒である。