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ID 8119
Eprint ID
8119
フルテキストURL
K002185.pdf 262 KB
著者
桶井 一秀 岡山大学
抄録
これまでに使われていない実験装置、熱ルミネッセンス(TL)シートと医療用X線フィルムを使ったnuclearite検出器(TLスタック検出器)の研究開発を行い、それを用いてnucleariteを探索した。TLシートのnucleariteに対する感度は2.3×10(-4)≤β≤6.6×10(-3)のイオン実験データを基に推定した。この際、入射粒子のエネルギー損失を直接のパラメーターとせず、入射粒子によってTLシートにどのような形でエネルギーが蓄積されるかを考慮した。この結果、低速領域でよりロバストな推定値が得られた。nuclearite探索は、イタリア、グランサッソー地下研究所にTLスタック検出器を設置して行った。稀にしか起こらないと予想される事象を探索する実験ではバックグラウンド事象の評価が重要である。地下実験におけるnuclearite事象のバックグラウンドとして、自然放射性物質および高エネルギーミューオン反応を検討した結果、これらが偽のnuclearite事象を起こす確率は無視できるほど小さいものであるとわかった。平均約994日の間設置されていた6.6㎡のTLスタック検出器を解析した結果、nuclearite事象は見出されなかった。これによりグランサッソー岩石中のエネルギー損失を無視できるような質量および速度の下向きnucleariteフラックスに対する90%信頼水準の上限値、1.3×10(-13) cm(-2)s(-1)sr(-1)(等方的フラックスに対しては6.4×10(-14) cm(-2)s(-1)sr(-1)が得られた。本研究で得られたnucIeariteフラックスの上限値はこれまでに他の実験グループによって得られた値と比べて最も小さいものではないが、ダークマター候補としてのnucleariteフラックスの上限値として十分有意なものである。そしてこれは熱ルミネッセンスシートの蛍光、燐光によって医療用X線フィルムを感光させるという実験技術によって得られた初めての結果であり、本研究は我々の銀河のnucleariteフラックスの上限値をより信頼できるものにしたと結論できる。
発行日
2001-03-25
出版物タイトル
資料タイプ
学位論文
学位授与番号
甲第2185号
学位授与年月日
2001-03-25
学位・専攻分野
博士(理学)
授与大学
岡山大学
学位論文本文
学位論文(フルテキストURL参照)
言語
日本語
論文のバージョン
publisher
査読
不明