岡山大学教育学部附属教育実践総合センターActa Medica Okayama1346-3705412004ある被害者遺族の有効なモーニングワークに関する質的分析--ラガーシュ仮説の再検討を含めて137145ENTsutomuYamamotoMidoriHamasakiChisatoTamaiFumikoYamasaki10.18926/11377平成13年6月8日に附属池田小学校で発生した児童殺傷事件の被害者遺族の一人である本郷由美子さんの手記『虹とひまわりの娘』を分析素材として、どんな悲嘆の対処法や社会的サポートがモーニングワークの促進に有効であるのかを探索的に探ることを研究の目的とした。加えて、「死者を殺す」というラガーシュ仮説の妥当性に関する若干の検討を行った。その結果、モーニングワークを通して親子の「絆」の結び直しがはかられ、娘に対する「愛の物語」が生成されていった過程が明らかになった。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学教育学部附属教育実践総合センターActa Medica Okayama1346-3705212002実践的ピアサポートおよび仲間支援活動の背景と動向―ピアサポート/仲間支援活動の起源から現在まで―8193ENHisakoNishiyamaTsutomuYamamoto10.18926/11387私たちの社会では、習慣的に仲間支援の手法が用いられてきたが、近年、「ピアサポート」が学校教育現場に実践的に導入され、欧米で開発されてきた技法なども紹介されて仲間関係を積極的に活用しようという動きがある。福祉の領域などでは、より積極的に仲間支援が行われ、歴史的に見ても教育・福祉等の分野で活用してきた経緯がある。そうした支援は、相談活動、葛藤調停、仲間づくり、アシスタント、学習支援、指導、助言、グループリーダーの7項目に分類される。学校で生徒がもつ仲間支援の力が十分活用するようにプログラムが構成されるとき、生徒らにとって有効なピアサポート活動が実施できる。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学教育学部附属教育実践総合センターActa Medica Okayama1346-3705512005不登校の子ども支援に関するガイドライン試案131137ENTsutomuYamamoto10.18926/11402教育臨床家が不登校の子どもの支援を行う際に「臨床的判断」の参照枠となるガイドライン試案を作成することが本論文の目的である。不登校の多様な状態像を見立てる指針として、a)登校状況からみた5型類、b)不登校の6段階の経過、c)7つの原因論、を提示した。その上で教育臨床家による不登校支援の原則を12項目にわたって列記した。教育臨床的な支援12項目は不登校の臨床実践から抽出された経験則が中心である。不登校の子どもの多様な歩みを保障する一方で、ガイドラインを参照しながら社会的自立へと向かえるように周囲が連携して支援していくことが求められる。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学教育学部附属教育実践総合センターActa Medica Okayama1346-3705312003教育臨床における見立て・評価について―教育実践総合センター研修講座・教育臨床部門分科会の報告―155166ENTsutomuYamamotoChiakiTsukamotoHisakoNishiyamaHiroshiAkazawa10.18926/11418以下の報告は、平成14年8月26日に開催された岡山大学教育学部附属教育実践総合センター研修講座の教育臨床部門の分科会「シンポジウム:教育臨床における評価・見立てについて」での報告内容をもとに、発表者がそれぞれに再構成して書き下ろしたものである。シンポジウムのコーディネーターは塚原千秋が行った。そして、まず心理臨床の視点から山本が教育臨床の見立てとは何かについて模索した見解を報告した。続いて専任スクールカウンセラーの立場から西山が米国のスクールカウンセリングをモデルにした評価の仕方を詳しい報告にした。最後に学校でのブリーフセラピーの可能性を探る教師の視点から赤沢が実践的な方法と認識を報告した。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学大学院教育学研究科Acta Medica Okayama1883-24231532013死別に伴う「悲嘆夢」の内容と機能 ―切る機能と結ぶ機能の振り子過程―19ENTsutomuYamamotoMidoriOkada10.18926/bgeou/51101大切な人を失った後,喪のプロセスにおいて,しばしば故人が登場する夢をみる。これを
「悲嘆夢」と称する。本論文の目的は以下の3点にある。⑴遺された人はどんな内容の夢を
見るのか⑵喪のプロセスに伴って変化が見出せるのか⑶悲嘆夢の系列で故人との絆は解消さ
れるのか,継続されるのか。分析の対象となった悲嘆夢は32 人分,49 個である。これらの
夢を質的な分析方法で検討した結果,16 種の下位カテゴリーが抽出され,4種の上位カテ
ゴリーにまとめられた。@喪失との直面,A別れのやり直し,B絆の結び直し,C共生の継
続,である。前の2つは「切る機能」が優位な夢であり,後の2つは「結ぶ機能」が優位な
夢である。喪のプロセスにおいて,切る機能と結ぶ機能の間を振り子のように揺れながら,
「結び直すことで切る」という逆説的な過程が進展していくことが明らかになった。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学教育学部附属教育実践総合センターActa Medica Okayama1346-3705712007教育臨床に固有の視点や関わりとは何か―オフィス臨床との比較において―165171ENTsutomuYamamoto10.18926/14390いわゆる「教育臨床」の用語は不明確な概念であり、教育臨床に携わる者の間でコンセンサスができているわけではない。本論文の狙いは、筆者のスクールカウンセラー等の教育臨床の経験をリフレクティブに省察し、教育臨床に固有の視点や関わり方を明確化しようとすることにある。明確化する際の手掛かりとして、(1)学校文化に参入した時のカルチャーショックを掘り下げて検討し、(2)伝統的なオフィスでの心理臨床の実践を照合枠として用いた。その結果、学校でのコミュニティ臨床に固有の視点や関わり方が浮かび上がってきた。オフィス臨床の基礎の上に、学校現場では新たな視点や手法を産み出し、学校コミュニティ臨床の「学」を生成してゆくことが求められる。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学教育学部附属教育実践総合センター心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-512912003臨床家としての経験と認識の変貌39EN10.18926/66579No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学教育学部附属教育実践総合センター心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-512922004ターミナル期の支援における「安堵の課題」のワークー映画「最後の輝ける日々」の心理臨床学的検討―111EN10.18926/66585 本論文では映画「最後の輝ける日々」を素材にして,臨死患者と援助者のターミナル期の臨床的課題(ワーク)を事例的に検討することを目的とした。キャリアウーマンである38歳の女性ジェーンは,末期癌の半年間を心理臨床家ウエンディに支えられ,自らの封印された過去と和解し,孤独な人生から輝ける人生へと変貌していった。またウエンディも未解決の過去と和解し,死の恐怖を乗り越えていった。二人の心のワークを分析した結果,ターミナル期における「安堵の課題」という準備的モーニングワークの遂行過程を確認し,新たに「書き直しの仕事」という概念を明細化した。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学教育学部附属教育実践総合センター心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-512932005性暴力の被害者カウンセリングから学んだこと―被害経験の本質とカウンセリングの要点―2535EN10.18926/66589 筆者は犯罪被害者カウンセラーの臨床実践を行ってきた。本論文では性暴力の被害者が被害後にどのような経験をしているかということと性暴力のカウンセリングの要点について学んだことをまとめることを目的とした。性暴力の本質は暴力と恐怖であり,その支援のためにはカウンセリングと平行して,さまざまの直接支援もオプションとして必要になる。箪者の行った様々の危機介入の経験をベースにしながら,性暴力の被害者に対する緊急カウンセリングの要点を暫定的にまとめたものである。オフィスでの個人カウンセリングが軸になっているが,臨床心理学的なコミュニティ支援の発想と方略が同時に求められる。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学教育学部附属教育実践総合センター心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-512942006友人の死と遺された「私」―喪失経験のインタビューから―16EN10.18926/66591 本論文は友人の自死に遭遇した女性Tさんの喪失経験の事例的検討である。まずTさんへのインタビュー調査を行い、その聞き取りの内容を再構成した論文草稿を被調査者に何度かフィードバックして、妥当性を検討してもらい、協力して悲嘆経験の本質に迫るという相互的な方法を行った。そして、従来の定型的な悲嘆反応の理解の仕方とは異なり、Tさん独自の経験様式のあり方、つまり悲嘆経験の個別性に関する心理臨床的な理解を試みたものである。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学教育学部附属教育実践総合センター心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-512952007喪失と悲嘆に関する鍵概念―キーワード32の定義の試み―18EN10.18926/66594 喪失と悲嘆に関する関心は年々広がりつつある。わが国でも、この領域の研究もかなり蓄積されてきたが、いまだ粗放的で、全体を統合する研究は少ない。20世紀初頭フロイトの黎明期の臨床的検討以来の長い研究史をもつが、いまだ用語の定義もあいまいで、概念規定にもかなりの揺れがある。そこで、私が30年間にわたって継続してきた研究と知識をリソースとして、主要な用語を整理して、喪失と悲嘆に関する32個のキーワードの意味を明確化しよう考えた。最後に、筆者の喪失研究の文献目録も掲載した。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学大学院教育学研究科・心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-512972009Neimeyerによる喪失論のニューウェーブ3744EN10.18926/66603 今日の喪失論はFreud,Sの対象喪失論を超えて、大きく変貌しつつある。その代表的な旗手が米国のNeimeyer,R.である。今夏、彼が来日して講演を行ったが、それを筆者が聴講したことに触発されて、Neimeyerの悲嘆の理解と援助に対する構成主義的なアプローチについて展望したのが本論文である。構成主義の視座から見ると、モーニングワーク(喪の仕事)の中心過程は「死別後における世界の意味の再構築」にある。さらにNeimeyer理論の検討に随伴して喪失論のニューウェーブを3点にまとめた。一つは「絆」の継続、二つめは悲嘆者の主本的・個別的なワーク、三つ目は人生の物語・意味の再構築である。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学大学院教育学研究科・心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-512982010青年期以降の分離不安・見捨てられ不安に関する検討2734EN10.18926/66605 これまで分離不安といえば乳幼児期の母子関係の現象として記述されてきた。青年期以降では分離不安は生起しないのか。生起するとしたら,どのような経験内容を持っているのか。また「分離」とはなにを意味するのか。分離不安と見捨てられ不安の違いは何か。不安の低減はいかにして可能なのか。こうした問いに対する答えを探索することを目的として,筆者の臨床経験や恋愛関係での分離不安の調査データを基礎にして,分離不安と見捨てられ不安に関する新たな見解を試行的に明らかにした。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学大学院教育学研究科・心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-512992011愛着と喪失に関する着想ノート3338EN10.18926/66608 喪失と悲嘆に関する認識を明細化する作業を30年余り継続してきたが,近年,欧米の悲嘆理論は変貌をとげ,深化してきている。その理論的展開については,本紀要の第7号「Niemeyerによる喪失論のニューウェーブ」において概観した。こうした動向と歩調を合わせて,私の愛着と喪失に関する認識も変化してきている。近年,私が着想していることを,断片的で,随想的ではあるが,着想ノートという形で,6つのテーマについて記述しておきたいと思う。今後の研究展開の萌芽となると考えられるからである。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学大学院教育学研究科・心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-5129102012Lindemann, E. による「急性悲嘆反応」に関する一考察2531EN10.18926/66610災害や事件・事故の被害者たちへの危機介入は,今日の社会において大きな課題となっている。コミュニテイ臨床という視点から精神科医Lindemannは,犠牲者の急性悲嘆に関して,悲嘆反応に関する詳しい症候学的な観察と記述を初めて行った。1942 年,アメリカのボストンにあるナイトクラブで火災が発生したが,彼は多数の犠牲者の遺族の治療と観察を行った。そして,その反応を「急性悲嘆症候群」と命名し,悲嘆反応の特徴を明確にすると同時に,病的悲嘆や予期悲嘆の特徴も報告した。本論文では,こうしたLindemann の論文を紹介しつつ,その内容について今日的視点から検討を加えたものである。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学大学院教育学研究科・心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-5129112013家族を亡くした子どもが安全に話し,聴き,活動する居場所―全米遺児グリーフ・サポートセンター:Dougy Centerの研修報告―3341EN10.18926/66613 アメリカのオレゴン州,ポートランドに全米遺児・遺族をサポートする,ダギーセンターがあるがある。本論文はそのセンターでの研修報告である。大切な人を亡くした幼児から青年までの子どもたちが通い,分かち合いやプレイ,創造的な活動を通して,悲しみに適応していくことを促進する,年間650人前後の人たちが利用している。その支援の核心は「安全な居場所でのサポート」にある。本論文では,筆者の研修経験を掘り下げながら,「安全な居場所」をどう提供するのか,「安全な居場所」となるための要件は何か, という問いを解明しようとした。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.岡山大学大学院教育学研究科・心理教育相談室Acta Medica Okayama2185-5129122013ケースカンファレンスなどでの事例報告の作成要領―いかにして臨床の舞台のリアリティを言葉にするのか―6168EN10.18926/66615 岡大方式のケースカンフアレンスで用いる事例報告の書き方の要領を示すことが本稿の主な狙いである。その前提として,「事例」とは何かを再確認し,事例の検討範囲,ないしは分析の単位についても言及した。ケースカンファレンスには査定のカンファ(インテーク会議),途中経過を検討する定例カンファ,終結事例や中断事例を総括するカンファの3種がある。そのカンファの目的に応じて,報告のレジュメも書き分けられる必要がある。最後にスーパービジョンの多様な形態について触れ,そこでの事例報告の仕方にも簡単に論究した。No potential conflict of interest relevant to this article was reported.