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ID 12413
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4
タイトル(別表記)
Inflation and Announcement−Drift −Discussion about the Inflation Illusion Hypothesis−
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著者
中川 豊隆 岡山大学 Kaken ID researchmap
抄録
本稿の目的は,利益のポストアナウンスメントドリフト(post−earnings−announcement−drift)を説明する一つの仮説であるインフレーション錯覚仮説(inflation illusion hypothesis)について概観しながら,この仮説のポストアナウンスメントドリフト(post−announcement−drift)研究における意義について考察することである。ポストアナウンスメントドリフトの検証は,財務情報と決算発表後の株価との関連性を判断する上で有効であるが,その関連性がインフレーションと関係しているということは,インフレーションが生じている場合の財務情報の有用性について考察する上で役立つかもしれない。ポストアナウンスメントドリフトは,財務情報が発表された後,数ヶ月間にわたり,プラスのサプライズに対して株価が市場平均よりも上昇し,マイナスのサプライズに対して下落するアノマリー現象である。また,ポストアナウンスメントドリフトに関するこれまでの研究では,利益のポストアナウンスメントドリフトだけではなく,キャッシュフローのポストアナウンスメントドリフト (post−cash−flow−announcement−drift)についても検証が行われており,それらの存在が確認されているが,このことは利益情報やキャッシュフロー情報の決算発表後における株価との関連性を証拠付けている。しかしながら,利益情報もキャッシュフロー情報も一般に公表されており,誰でもコストをかけることなく利用可能であるにもかかわらず,ポストアナウンスメントドリフトが生じるのはなぜかという疑問点は依然として存在している。ポストアナウンスメントドリフトの存在が何度も確認される一方で,その現象が発生する原因については,いまだ完全には突き止められていないのである。このような状況において,インフレーション錯覚仮説は,利益のポストアナウンスメントドリフトが生じる原因をインフレーションで説明することを試みるものである。その仮説の主旨は,インフレーション下では,投資家は企業の将来業績にイリュージョン(錯覚)をいだいており,そのことが投資家の合理性を低下させて,ポストアナウンスメントドリフトを生じさせるということである。本稿の構成は以下のとおりである。まず,次節では,アナウンスメントドリフト研究におけるインフレーション錯覚仮説の位置づけについて説明する。第3節では,インフレーション錯覚仮説を検証したChordia and Shivakumar(2005)を概観して,その分析手法と主な分析結果を確認し,第4節では,日本で検証を行う際に認識しておくべき点を指摘して,最後にむすびとしたい。
出版物タイトル
岡山大学経済学会雑誌
発行日
2007-09
39巻
2号
出版者
岡山大学経済学会
出版者(別表記)
The economic association of okayama university
開始ページ
57
終了ページ
67
ISSN
03863069
NCID
AN00032897
資料タイプ
学術雑誌論文
OAI-PMH Set
岡山大学
言語
日本語
著作権者
岡山大学経済学会
論文のバージョン
publisher
NAID
Eprints Journal Name
oer