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ID 7234
Eprint ID
7234
フルテキストURL
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著者
新納 敏文 岡山大学
抄録
最近の建物では悪化傾向にある磁場環境のもと,磁場の影響を受けやすい機器の設置されるケースが増えてきている。その結果,磁場による障害が顕在化しつつあり,建築分野では早急な対応が求められている。この問題を解決するためには,電子機器のみならず建物や都市空間までを考慮した,建築におけるEMC(Electro-Magnetic Compatibility)の確立が必要である。建物全体としてエミションとイミュニティのバランスを考慮しなければならない。対象となる電磁環境には,大きく分けて磁場と電磁波がある。このうち,本研究では磁場,その中でも特に低周波の磁場を取り上げる。建築電磁環境を構成する要素ということで,本論文ではこのような磁場を環境磁場と称し,『建築環境に影響を与えるすべての磁場』と定義する。このような背景のもと,本研究は建築におけるEMC,すなわち建物全体としてのエミション,イミュニティを定量的に評価する手段として,環境磁場の計測法及び数値シミュレーション法について研究するものである。ポイントは,次の3点である。1)環境磁場の計測法の構築 2) 環境磁場の数値シミュレーション法の確立 3) EMI (Electro-Magnetic Interference)問題の具体的解決 以下,この3点について要約を述べる。まず,1)の計測法であるが,これは環境磁場の把握,評価のベースとなる。正しい計測を行うことが,正しい判断を下すための基本である。しかしながら,建築分野において環境磁場の標準計測法はなく,適当な計測器を使って各自の判断で計測,評価しているのが実情である。このような状況下,日本建築学会では1994年に磁場計測評価ワーキンググループを設立し,環境磁場の標準計測法に関する研究を進めてきた。筆者は,この研究に初期から加わり,幹事として活動してきた。本研究における計測法は,ワーキンググループでの研究成果をもとに筆者独自の知見を加えたものである。磁場計測の分類,磁場計測器の性能分析と性能確認試験,計測の基本的手順と具体的方法のとりまとめを行った上で,磁場の種類別に8種の計測システムを構築した。次に,2)の数値シミュレーションであるが,これは建築におけるEMCを評価してEMI問題解決のための具体的な対策を検討する際に有効である。特に,磁気シールドルームの設計及び影響評価に有効な手段となる。本研究ではまず,磁気シールド問題に対応する辺要素を用いた3次元非線形磁場解析システムを開発した。これは従来の有限要素法と比較して,計算時間の短縮,解析精度の向上が期待できるものである。一方,有限要素法とは異なる原理に基づき,空間の要素分割が不要で無限領域を考慮できる改良積分方程式法が最近注目されている。本研究では,これらの解析手法により得られた結果を実測値と比較することにより,実用性(計算時間,解析精度等)の観点からその有効性と限界を明らかにした。最後に,3)のEMI問題では,計測及び数値シミュレーションにより環境磁場に起因する3種類,5例の障害事例(①MRI磁気シールド,②送電線磁場対策,③残留磁気問題)に対して具体的解決を図った。①MRI磁気シールドでは,病院におけるMRI漏洩磁場の周辺機器への影響問題に対して,シールド効果に及ぼす間隙と開口の影響及び磁気飽和の数値シミュレーションによる検討,シールド性能を評価するための磁気シールドルーム内外における磁場計測,及びMRI実機への数値シミュレーションの適用を行った事例について述べる。結果として,磁場計測によるシールド性能評価の妥当性,及び数値シミュレーションの有効性を明らかにした。②送電線磁場対策では,送電線近傍建物におけるCRTディスプレイの画像障害に対して,磁場低減対策として逆位相送電,距離減衰,磁気シールドを取り上げ,その効果を計測及び数値シミュレーションにより検証した事例について述べる。結果として,逆位相送電により磁場が建物内部で約28~36%,屋外で約20~28%に低減されること,距離減衰により磁場が送電線からの距離にほぼ反比例して小さくなること,建物の鋼製ルーフデッキと鋼製デッキプレートが図らずも磁気シールド材として機能して建物内部の磁場低減効果を高めていることを明らかにした。③残留磁気問題では,事務所におけるCRTディスプレイの画像障害,マンションにおけるテレビの画像障害,工場における無人搬送車の走行障害の3例に対して,それらの原因である残留磁気の解明,解決に取り組んだ事例について述べる。まず,障害を引き起こした磁場の発生源を鋼材の残留磁気と特定し,鉄骨造及び鉄筋コンクリート造の建物では残留磁気の影響の大きい領域がどこにでも存在する可能性のあることを明らかにした。次に,構造物に使われる代表的な鋼材として鉄骨,鉄筋,デッキプレートを取り上げ,製造工場,加工工場,建設現場に分けて残留磁気の発生原因の調査を行い,主な原因として鉄骨・鉄筋に対して製造工場(一部,加工工場)で使用されるリフティングマグネット,デッキプレートに対して建設現場で、実施されるスタッド溶接を抽出した。次に,リフティングマグネットによる鉄筋の着磁,スタッド溶接によるデッキプレートの着磁を対象として,試験体によるモデル実験及び数値シミュレーションを実施し,残留磁気の発生プロセスとメカニズムを明らかにした。最後に,残留磁気を低減化する具体的な対策について,製造場,加工工場,建設現場,竣工後に分けてまとめた。
発行日
2000-09-30
出版物タイトル
資料タイプ
学位論文
学位授与番号
乙第3513号
学位授与年月日
2000-09-30
学位・専攻分野
博士(工学)
授与大学
岡山大学
学位論文本文
学位論文(フルテキストURL参照)
言語
Japanese
OAI-PMH Set
岡山大学
論文のバージョン
publisher
査読
不明