Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

福助ギクの窒素施肥基準曲線の作成

景山 詳弘 岡山大学
小西 国義 岡山大学
発行日
1993
抄録
福助ギクは日本古来の鉢物観賞ギクのうち,大輪の花を付ける品種を用いて,矮化剤処理や栄養生長期間を短くすることで草丈を低くしたもので,その花姿はコンパクトで観賞価値の高い鉢物草花である.従来から,一般には栽培は難しいものとされ,一部の愛好家によって作り継がれてきたものであり,その生育と栽培法について科学的な解析はされていない,本報は,福助ギクの栽培技術の普遍化を目的として,合理的な施肥法を確立するために,窒素吸収と生長過程を解析し,これに基づいて窒素施肥基準曲線を作成した.そして,この基準曲線の検証栽培を行なった. 1.品種は‘兼六香菊’を用いた.標準的な福助ギクの総窒素吸収量を知るために,液肥の窒素濃度を50,100,200,400および800ppmの5水準で栽培した.その結果,200ppm区および400ppm区で品質の良い福助ギクが生産でき,標準的な窒素吸収量は1株当たり800~1,000mgと推定された. 2.窒素吸収曲線を明らかにするために,1株当たりの窒素施肥量を400,800,1,200,および1,600mgとし,生長曲線に沿って5日毎に分割して施用した.鉢土の残存窒素量を継時的に測定したところ,1,600mg区および1,200mg区では施肥量が吸収量を上回ったことを示した.800mg区の福助ギクが高品質であり,その窒素吸収量の変化から回帰曲線を作り窒素吸収曲線とした.この曲線に基づいて,窒素利用効率を60~65%として変換し,Fig.6に示した窒素施肥基準曲線を作成した. 3.窒素施肥基準曲線によって福助ギクを栽培したところ,高品質のものが生産できたので,この基準曲線は妥当なものであると判定できた.そして,植物体各部位の乾物重の変化から,生長過程を解析したところ,福助ギクでは,大型の花を開花させるために,開花期には葉の乾物が花に転流することがわかった。
キーワード
福助ギク
窒素施肥基準曲線
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029