ブドウの加温栽培における地温不足の実態を明らかにするために,1月中旬から加温した‘連棟’ガラス室の‘マスカット・オブ・アレキサンドリア’栽培園において,栽植位置の異なる樹体の生育と気温及び地温の変化を調査した. 1.地温はガラス室内の位置により大きく異なり,側壁寄りでは中央寄りに比べて発芽期で4~6℃,開花期で2-3℃低かった.室外地温は発芽期までは5℃以下で推移し,その後徐々に上昇したが開花期でも10℃以下であった.室内気温は位置による差はほとんど認められず,また樹体温も中央寄りに比べて側壁寄りで低いということはなかった. 2.根は室外にも分布したが,その量は比較的少なかった.新根の発生は中央寄りに比べて側壁寄りで遅かった.発芽の開始及び100%の発芽率に達したのも側壁寄りで遅かった.新梢や花穂の生長速度には位置による大きな差はみられなかったが,発芽の場合と同様に側壁寄りの生育は中央寄りに比べて遅れた.側壁寄りにおけるこのような生育の遅れは収穫果実でも認められた. 3.以上より,1月中旬から加温したブドウ樹では地温不足に起因すると思われる生育の遅れが認められたが,12月加温でみられる生育不良は地温不足だけでなく休眠覚醒が不十分であることも大きく関係していると思われた。