Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

薄荷の育種学的研究 第5報 日本薄荷とM. spicata L.(pilose form)とのF1の細胞遺伝学的研究

池田 長守 岡山大学
宇渡 清六 岡山大学
発行日
1955
抄録
1.日本薄荷とM. spicata L.(pilose form)との交雑によつて得た種間雑種F1の6系統は何れも旺盛な発育をとげ,その形質は相互間で多少の相異を示したが,何れも略両親の中間であつた. 2.これらF1系統では葯は退化し,葯中には通常稔性花粉を含んでいない.併し放任受精で0乃至1.28%,平均0.5%の結実率を,又両親との戻交雑では,0乃至0.6%,平均0.29%の結実率を示した.且,得られた種子は可なりの発芽率を示した. 3.M. spicata (pilose form)ではPMCのMIにおいて,24IIが観察された.日本薄荷では第3報に示したように48IIが見られる.而してF1の体細胞染色体数は,供試6系統いずれも両親の PMCのMIに現われる2価染色件数の和72であつた. 4.F1のPMCのMIにおける2価染色体の出現頻度は12~21,モードは16で,残りは1価染色体であつた.花粉4分子は多数の分胞子に分裂する傾向が見られた. 5.薄荷属の種は12を基本染色体数とする.而して日本薄荷は8倍体で,生殖細胞は4組のゲノムを,又M. spicataは4倍体で生殖細胞は2組のゲノムを夫夫保有する.且,両親種は何れも異質倍数体と推定する理由がある.従つてF1の減数分裂の際,染色体の同親接合は考え難く,そのMIに現われる2価染色体は,何れも異親染色体の結合と考えなければならぬ.よつて筆者等は,前記F1の細胞学的観察から,両親のゲノム中,1組は両親間で完全相同であり,他の1組は12本中9本まで部分相同の染色体を含む部分相同ゲノムであると推定する。
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029