Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

テッポウユリにおける普通葉とりん片葉の形成

安井 公一 岡山大学
発行日
1975
抄録
テッポウユリは普通葉,りん片葉,基部が肥厚した普通葉などのいろいろなタイプの葉を持ち,後二者のタイプの葉の細胞中には多量のでんぷんが貯えられている. この実験はこれらの葉のタイプが分化時に決定するものか,あるいは分化後の環境条件によって決定されるものかを明らかにする目的で行なった. 1972年6月20日にりん片葉を分化中のりん茎を掘り上げて材料とした. りん茎は1区10個体として7区に分け,つぎに示すようにいろいろな程度に外側のりん片葉を取り去った. 1)生長点だけを基盤上に残して,すべてのりん片葉を除去. 2)3~4枚の葉原基を墓盤上に残す. 3)7~8枚〃. 4)10~12枚〃. 5)17~20〃. 6)18~23〃. 7)無処理. 処理したりん茎は箱に植えて20℃のファイトトロンヘ入れた. 別に対照としてりん茎を掘り上げず,母植物についたままの状態で20℃とする区を設けた. 実験結果を要約すると以下のとおりである. 1)りん片葉を除去してから5週間後,基盤上に残した若い葉原基は完全な普通葉となった. この場合,完全な普通葉となったのは長さが4~5mm以下の,もっとも内側にある約10枚の葉原基だけで,外側にあるでんぷんを持った大部分のりん片葉は普通葉とはならなかった. これに対し,掘り上げなかったりん茎はりん片葉の形成を続けた. 2)テッポウユリの若い葉原基は,普通葉およびりん片葉のいずれにも発達し得る分化能力を持ってており,葉のタイプを決めるのは茎頂分裂組織ではなく,葉原墓をとり巻く環境条件であると言える。
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029