Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

人工不妊昆虫の生態に関する研究 VIII.ミカンコミバエ正常雄と137Csガンマー線による不妊化雄の交尾競争の実験的分析

清久 正夫 岡山大学
佃 律子 岡山大学
発行日
1974
抄録
羽化2日前の蛹へ137Csガンマー線7KRを照射すると,それより発育した成虫の羽化率と寿命はそれぞれ正常と大差なく,雄蛹への照射では完全不妊ではなかったが98.9%以上の不妊率が得られた. それらの不妊原因は,不妊化雄と交尾した雄の受精嚢内の糖子が活動していたことからおもに優性致死変異に帰因することが推察された. 実験室において不妊化雄(S♂)と正常雄(N♂)を雌(N♀)に対しいろいろの割合で組み合わせそれぞれから得た孵化率を調べた(1)不妊化雄の雌に対する比(S♂/N♀)が増加すれば癖化率は直線的に低下し一定の比率を越えるとその低下が急激になる. (2)孵化率を換算した不妊率は不妊化雄に置きかえるため正常雄・雌の雄の一部を取り除いたものの雌に対する比(N♂/N♀)の倍数(これは置きかえた不妊化雄の比S♂/N♀に相当する)に対して,取り除いた正常雄の比(N♂/N♀)の百分率水準ごとにそれぞれ一直線の関係を示す. よってそれらの直線群から何パーセントの正常雄のかわりにその何倍の不妊化雄を用いるとその組合せにおいて何パーセントの不妊率が予期されるかがわかる. (3)不妊化雄の正常雄に対する比率の対数値(x)と孵化率実験値(y)との関係は,y=18.413-11.952(x-1.295),孵化化率推定値(Y)との関係は,Y=11.890-15.462(x-1.295)の回帰直線式を示し,2つの式の回帰係数の比(R)は0,772となったので,組合せにおける不妊化雄の不妊化の効率が評価された. (4)所定の方式によって不妊化雄と正常雄のコンペティティブネスの程度をあらわす指標Cを算出し,その値の3つの平均値水準,0.265,0.576,1.001における正常雄に対する不妊化雄の比(S♂/N♂)と不妊率との関係を3つの曲線で示した. この曲線は与えられたS♂/N♂における不妊率がわかっておればその組合せにおける不妊化雄と正常雄の交尾競争の程度を予期するのに役立つものである。
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029