Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

西南暖地冷水田における水稲の冷害に関する研究 第1報 冷水灌漑田に於ける水稲期間の水温並に用水收支について

志茂山 貞二 岡山大学
発行日
1960
抄録
(1)岡山県真庭郡川上村々内の三地域の水田を対象として1933~34年水稲栽培期間中の用水量並にその収支と水温の調査を行つた. (2)調査地に於ける気象並に作物地理的条件は岡山県に広く分布する冷水田のそれと略々近く,これは又西南暖地の所謂冷害田の一般的性格でもある. (3)稲作期間中の用水温度は平均14~18℃で最高水温においても22℃に達せず,又気温との差も顕著であつた, (4)調査田に於ける灌漑法は押水式灌漑法と呼ばれるもので用水路とは別に設けた取水路から灌水され,水田水位の低下に応じて自働的に給水されている. (5)取水路内流下水の水温と流量との関係はT=awbで表わされ,流量を制限すれば取水路内の水温を数度上昇せしめることは容易である. (6)稲作期間中の用水量は有効雨量を併せ3.4~5.3×103mmに達し,その85~94%が漏水し,実際に稲体に利用される水量は僅か2.9~5.0×102mmに過ぎない. (7)稲作期間中の平均日滲透量(縦滲透及横滲透量)は水田に依つて異るが40~65mm/dayでその20~80%近くが畦畔漏水である. (8)このような漏水過多は冷水田の水温,地温の上昇,保温を妨げ,無機塩類の流亡を大ならしめ,稲の生育収量を低下せしめる大きな原因となる。
キーワード
岡山県真庭郡川上村
水稲
冷害
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029