Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

赤かび病に対する小麦品種の抵抗性に関する研究 (第1報) 赤かび病の小麦の1小穗内の初発病頴花の位置と品種間差異及び葯骸との関係

竹上 静夫 岡山大学
発行日
1957
抄録
(1)昭和31年5月は小麦の開花期(5月4~6日)より成熟期にかけて降雨,曇天多く,赤かび病の大発生を招いた.しかしその発病は初期の降雨に当つても発病は見られず,数回の降雨を経て5月20日以降に広く発病をもたらした. (2)赤かび病の最初に侵入発病した頴花には,葯骸の存在が認められた. (3)罹病小穂は他の健全小穂に比し,一見して不稔小穂に発病したかのような観を呈するが,これは粒が多量の水分を含み,その体積の最高に達した頃の粒が侵されると,間もなくその小穂内の全粒が枯死して粒の萎凋をもたらし,小穂全体が枯凋萎縮するためである. (4)1小穂内の発病源となつた頴花の位置を調査すると,品種間に相違がある.即ち1小穂当り4頴花以上を有する小穂を対象とし,この1小穂内の頴花を第1及び第2頴花群とそれより上位の頴花群とに区分した場合,第1及び第2頴花群に発病比率の高い品種(例:シラサギコムギ),第1及び第2頴花群より上位の頴花群に発病比率の高い品種(新中長,畠田小麦),両頴花群ともに発病の高い品種(アカツキコムギ)とに分けられた. (5)このような発病源頴花群の品種間差異は,そのまま頴花群別の葯骸残留状況と一致する.即ち第1及び第2穎花群に発病源となつた頴花の多いシラサギコムギは第1及び第2穎花群の葯骸残留率がそれより上位の頴花群に比して高く,その他の頴花群別発病の関係についても,頴花群別葯骸残留率と並行的関係にあつた.(6)粒の充実に伴う開頴現象によつて葯骸放出を行う品種(例えば新中長,畠田小麦など)にあつては,この結果からもその放出の程度によつて当然罹病の軽減をもたらすことが予想される。
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029