Okayama Economic Review
Published by the Economic Association of Okayama University

Online ISSN 2433-4146
Print ISSN 0386-3069

「ワシントン・コンセンサス」の諸問題とその克服への道--中南米における「ポスト・ワシントン・コンセンサス」の適用をめぐって

盛 真依子 岡山大学
発行日
2007-12
抄録
本稿の目的は,「ワシントン・コンセンサス」をベースとした1990年代のIMF・世銀による途上国に対する政策が,1990年代後半の厳しい批判によってどのように修正されたのか,またその修正された政策は開発途上諸国の希望する改革と矛盾せず,すり合わせが可能であるのかを検討することである。本稿では,検討の対象としてラテンアメリカの国々を選んだ。IMF・世銀が,1980年代末から1990年代前半にかけてラテンアメリカをはじめとする開発途上諸国に対して要求した「新自由主義」に基づく政策の思想的ベースは「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれる。西側政府機関,民間金融機関も初めはこの方針と共同歩調をとったが,1990年代後半からこの政策の問題点が頻繁に指摘されるようになった。現在,開発途上諸国では,自由化による経済成長戦略より,貧困問題などの社会問題をより重視する傾向が強まってきている。この傾向に沿ってIMF・世銀はその政策を柔軟に変化させようとしている。こうした潮流の変化の中で,IMF・世銀は「ワシントン・コンセンサス」の問題点を修正しながら開発途上諸国支援を続け,一定の成果を修めてきている。一方で,開発途上諸国においても新しいコンセンサスや経済の仕組みが提示されている。本稿では,このようなIMF・世銀内外で活発化している「ワシントン・コンセンサス」後の新しい改革を模索する動き全体を「ポスト・ワシントン・コンセンサス」と称することにする。本稿では,まずはじめに「ワシントン・コンセンサス」が形成された背景を簡単にまとめる。次に,IMF・世銀の政策変化,IMF・世銀の政策に対する批判を検討する。そして,「ワシントン・コンセンサス」に対するオルタナティブとしての性格を持つ中南米における経済再生プログラムを整理・分析し,これらが理念的・政策的にIMF・世銀の政策と対立するものなのか,または相互補完的な性格を持つものなのかを考察する。
備考
本稿は,筆者の修士論文「「ワシントン・コンセンサス」の諸問題とその克服への道−中南米における「ポスト・ワシントン・コンセンサス」の適用をめぐって−」(岡山大学大学院社会文化科学研究科, 2007年1月)の一部を加筆・修正したものである
ISSN
03863069
NCID
AN00032897
NAID
JaLCDOI