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ヒト肺の肥満細胞に関する研究 第1編 ヒト肺肥満細胞の分離精製に関する検討

前田 昌則 岡山大学医学部第二内科学教室
Thumnail 98_475.pdf 2.64 MB
抄録
19世紀後半にEhrlichによって見出された肥満細胞は,皮膚,肺,腸管をはじめ全身の臓器の結合組織血管周囲に多数分布しており,各種炎症巣において急性炎症期では減少し慢性炎症期では修復機転の続く限り増加するため,炎症反応の初期から修復に至る各時期に関与して外界の環境変化に対応する幅広い役割を担った細胞と考えられている.さらに1966年には石坂らのIgEの発見によってアレルギーの分野における肥満細胞の機能に関する研究が長足の進歩を遂げるに至っている1)~3).このような肥満細胞の細胞化学,免疫薬理学的な研究においては材料の調整法の理由から主としてラットなど動物由来の肥満細胞が用いられている.また著者らはヒト肥満細胞の代りにヒト末梢血好塩基球を用い,その反応性をアレルギー反応の指標として一連の検討を行なっている4)~9).しかし,肥満細胞と好塩基球の形態学的あるいは機能的な相違点10)~14)については以前から指摘されており,また近年種属及び臓器間での肥満細胞のheterogeneityの存在が明らかにされてきた15),16)ことから,気管支喘息をはじめとするアレルギー性肺疾患の病態を解明する上で,各種動物由来の肥満細胞とヒト肺肥満細胞,さらにヒト末梢血好塩基球との相違点を比較検討し,ヒト肺肥満細胞の特異性を明らかにしておく必要があると思われる.以上の目的で従来からヒトの肺小片を用いた肥満細胞の研究17)~19)が行なわれているが,試薬が組織中の肥満細胞に到達しにくく,かつ遊離された化学伝達物質も正確に定量できないという欠点がある.それを補なうために1972年にGouldらが家兎の肺組織を種々の酵素で処理し単離肥満細胞を分離した20)のに始まり,ヒト肺では1976年にAustenらが同様の方法で分離を試み21),1982年Lichtensteinらはその方法を発展させて高率のヒト肺単離肥満細胞を得ることに成功している22),しかしながら以上の方法では細胞の回収率や繁雑な精製手段などの問題点が残されている.そこで著者はヒト肺肥満細胞の機能を検討する手段として,外科的切除肺から肥満細胞を分離精製する方法とviabilityについて種々検討し,細胞障害性が少なく回収率が良く,かつ比較的簡便な分離法を考案したので報告する.
キーワード
human lung mast cell
purification
viability
microscopic observation
histamine
ISSN
0030-1558
NCID
AN00032489