非観血的な方法による血流計測は,循環系疾患の診断,治療および術後のfollow upなどにますますその重要性を増してきている.ことに末梢動脈の閉塞性疾患への応用はいろいろに試みられている.しかし超音波ドプラ法を応用した非観血的血流計による血流情報は,今日なお多くの問題点を残しており,完成された検査法とは言いがたい.たとえば超音波ドプラ法による計測は超音波ビームと血流走行とのなす角度が不明のため血流速度の絶対値の計測は不可能であつた.この欠点を解消するため血流走行と角度依存性のない超音波ドプラ法による血流計測法が開発された.定量的非観血的血流計(QFM)と呼ばれる新らしい装置で,血流速度の絶対値のみならず血流量も測定可能である.これは血管径の変化を経時的に計測する超音波パルスエコートラッキング法と3枚のトランスジューサーを使用することにより角度依好性をなくした血流計の2系統からなり(図1),これらをマイクロコンピューターで有機的に組み合わせたものである.すなわちこの血流計は流速に血管径を加味したもので,従来の血流計に血管径という一次元を加えたもので,この方法によりはじめて血流量の測定が可能になったといえよう.しかし本計測器は開発されてからの日時は短かく,その精度に関しては実験的にも充分な検証があるとはいえない.本研究はこのQFM法の精度を検するのを目的としたものである.犬を用いた実験では,大腿動脈の流量を本法で計測し,電磁流量計で計測した流量と比較した.臨床では,健常者で総頸動脈,大腿動脈,足背動脈の血流量や流態性状の計測をおこない,大腿動脈,足背動脈においては運動負荷による計測もおこなった.さらに人工弁置換患者の総頸動脈流量や流態性状も計測し,犬でも腹部大動脈の人工血管置換による流量変化や流態性状を計測し,人工血管置換による血流変化を検討した.