Journal of Okayama Medical Association
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常温希釈体外循環における適正潅流量の検討:とくに酸素消費量の面より

杉本 誠起 岡山大学医学部第二外科教室
90_479.pdf 1.09 MB
発行日
1978-04-30
抄録
19世紀から多数の研究者により報告された体外での臓器潅流の研究は,1937年Gibbon(1))の酸素付加装置による猫の潅流実験ののちに,さらに進展の度を早め,臨床的には,1951年Dennisら(2))が心房中隔欠損症の手術に試み,ついで1953年Gibbonが本症の手術に成功して以来,直視下心臓手術は人工心肺装置ならびに体外循環手技などの改良により広くおこなわれるようになった.一方,体外循環の副作用として,血清肝炎(3)),赤血球のsludgingやaggregation(4)),blood pooling(5)6))や同種血症候群(7)8))が問題となり,また装置充填に多量の新鮮血を要することも欠点であった.当時,生理学的研究では臓器潅流に電解質液を使用していたこと,Gollanら(9))が低体温下では赤血球の無い液体でも溶存酸素のみで組織は酸素を摂取しうることを示したことにより,血液希釈体外循環が考えられた.1951年PanicoとNeptune(10))が生理的食塩水で充填したのに始まり,Longら(4))の低分子量デキストラン,Gooleyら(11)),Zuhdiら(12)),De WallとLilleheiら(13))の5% 糖液,そしてNevilleら(14))の乳酸加リンゲル液の使用により希釈体外循環が主流となった.しかし,血液希釈にともなう問題も生じた.すなわち血液希釈によるヘモグロビン濃度の低下した血液は,酸素運搬能力も低下し,この低下を代償するために潅流量を増加しなければならないと考えられる.従来は全血体外循環時に設定された潅流量を希釈体外循環にも用いられてきたが,その可否を酸素消費量および血行動態の面より検討した.
ISSN
0030-1558
NCID
AN00032489