Journal of Okayama Medical Association
Published by Okayama Medical Association

<Availability>
Full-text articles are available 3 years after publication.

著明なてんかん性要因を示し,挿間性昏迷状態をくりかえした非定型精神病の1例

細川 清 岡山大学神経精神医学教室
西村 幸子 岡山大学神経精神医学教室
池田 久男 岡山大学神経精神医学教室
81_71.pdf 929 KB
発行日
1969-02-28
抄録
症例は13才女子.患者の7親等にあたる父系に精神病者があつたというが遺伝歴の詳細は不明.既往歴に特記すべきものはない.本症例に招来した前後7回の昏迷状態と,その他幻覚妄想の表面化した,昏迷状態と異なる状態像をあわせ観察し,発病より入院に至る経過,及び前後2回の入院の経過を詳述した.昏迷状態はつよい無動無言を主兆とする分裂病性昏迷と区別のつかないもので,始まりは急で1日を境にして訪れ,2週間前後続き寛解をみる.この間認むべき意識障害はなく,患者は些細な出来事迄すべてを想起できる.前後18回の脳波による継時的観察を行なつた結果,昏迷状態下では,棘波を中心とする発作性異常波は抑制され,寛解期にはこれが出現しやすい傾向を認めた.昏迷状態はAmytal sodiumで,一時的ではあるが劇的に改善され, Valiumの大量内服でも臨床像を改善できた.しかし抗てんかん剤は,むしろ昏迷状態には奏効しなかつた.本症は精神病像からは非定型精神病群の1型としてみられるが,発作波の消長からは,てんかんにみられる所見と同一の傾向を有し,両者を結ぶ1点を鮮やかに示した1例であつた.非定型精神病のてんかん性要因はかかる症例の継時的観察から決定されるべきものであると考えた.その他昏迷状態の出現と,発作波の消長に関し,若干の生理学的推論を試み,考察を加えた.
ISSN
0030-1558
NCID
AN00032489