健康ナル成熟家兎ヲ速カニ殺シ大脳皮質, 脊髄前角竝ニ坐骨神經ヲ採リ之ヲ細切シテ秤量シ其ノ十倍量ノ純「アルコホル」ヲ加ヘテ5分間強ク振溢シ48時間以上室温ニ放置シテ得タル神經「アルコホル」抽出物ヲ0.9%ノ食鹽水ヲ以テ極メテ徐々ニ60倍ニ之ヲ稀釋ス茲ニ生ジタル「リポイド」粒子ニ種々ノ「アルカロイド」(「モルフイン」, 「ストリヒニン」, 「アトロピン」, 「コカイン」, 「フイソスチグミン」, 「ピロカルピン」, 「ヒニン」, 「ニコチン」)ヲ十萬分ノ一, 三萬分ノ一, 一萬分ノ一, 五千分ノ一, 千分ノ一ノ濃度ニ於テ作用セシメ薬物點加後毎10分, 1時間, 2時間, 4時間, 8時間ニ於テ顯微鏡下ニ於ケル「カタホレーゼ」運動ニ依ツテ粒子ノ電氣的運動ヲ觀察セリ. 神經「リポイド」ニ「アルカロイド」ヲ作用セシムレバ神經「リポイド」が本來有スル陰性電荷ニ變化ヲ及ボスモノナリ. 此ノ場合興奮性ニ働ク薬物ハ「リポイド」ノ電荷ヲ増シ麻痺性ニ働クモノハ其ノ電荷ヲ減ズ. 「アトロピン」, 「ピロカルピン」等モ興奮性ニ働ク薬物ト同ジク其ノ電荷ヲ増ス. 時間的ニハ薬物點加後30分乃至180分ニ於テ最モ著明ニ作用スルモノノ如シ. 濃度ニ依リテモ亦其ノ作用ニ差異アリ. 即チ最モ著明ニ作用スル濃度ハ三萬分ノ一前後ノモノナリ.