内分泌腺細胞の分泌時間は瞬時とされていることから,一般的にその分泌像の形態的観察には,分泌を促進せしめる実験系が用いられている.又膵ラ氏島B細胞分泌の超微形態は,専ら浸漬固定標本で観察されている.今回,我々は分泌が遅延している動物で,高速還流した膵ラ氏島細胞について観察した.即ち,前報と同様のFe(3+)-NTA誘発糖尿病ラットの上行大動脈より2%グルタールアルデヒド150mlを15ml/minの速度で還流固定し,ラ氏島B細胞のβ顆粒分泌像に焦点を絞って観察した.その結果,前報の浸漬固定法では観察されなかった開口分泌像が多数観察され得た.対照の健常動物に比べ, Fe(3+)-NTA投与動物では,分泌直前から分泌後に至るいろいろな段階のβ顆粒の分泌過程が観察された.以上の結果から,開口分泌像の電顕的観察にはむしろ本実験系のように細胞分泌を障害ないし低下せしめ,高速還流固定法を用いることが必要であると結論した.