低流量酸素吸入時の加湿について,アメリカのいくつかの学会が提唱するガイドラインでは,加湿には科学的根拠がないとしている。このため,O大学医学部附属病院放射線部特殊検査室において,低流量酸素吸入時の加湿を廃止したが,廃止後,医療者や患者から加湿の要望が若干あった。また,病院内の各部署から依頼をうける特殊検査室では,院内における加湿状況にばらつきがあり,明確な基準を確立する必要性を感じた。我が国において,酸素加湿に対する基準やガイドラインは見当たらないため,国内外の文献をもとに,低流量酸素吸入時の加湿の必要性について考察した。加湿の効果を,健常者や患者を対象として加湿の有無で比較調査した研究では,日本国内で酸素流量2L/分以下,アメリカで5L/分以下において自覚症状に有意差は認められず,加湿器を使用しなくても問題がないことが明らかにされていた。日本国内で酸素流量を5L/分以下に設定して比較調査した研究は行われていなかった。特記すべき点として,有意差は認められなかったものの,両群とも鼻・咽頭の乾燥感に関する訴えが多かったことが挙げられた。これらの知見から,日本国内において,さらに酸素流量を増し,環境中の湿度を考慮した比較調査が必要であることと,鼻・咽頭の乾燥感への対策を考案することが,加湿の基準を確立する上で重要であると考える。