本稿は、まず[Ⅰ]において主として鈴木雅之と岩倉具視を手がかりにして、王政復古前における天皇統治の原理がどのように把握されていたかを明らかにする。次に[Ⅱ]において王政復古直後に形づくられようとした天皇像の基本的性格を矢野玄道と大久保利通の見解によって考察する。[Ⅲ]においては、[Ⅰ][Ⅱ]をうけて、明治維新政府の最初の教育制度構想である学舎制の特質を、矢野玄道の国学思想と学校構想とに焦点をあてて考察し、明治初頭の復古性を教育理念の側面から明らかにしたい。これらの作業は、教育勅語によって確定される民衆の臣民化政策の性格を、その道程の発端の時点において明らかにすることになるとおもうのである。