岡山大学大学院教育学研究科研究集録
Published by 岡山大学大学院教育学研究科

ISSN 1883-2423

「徒然草」の草木をめぐって(下)

稲田 利徳 岡山大学
発行日
1977
抄録
前編においては、「徒然草」一三九段の「家にありたき木は」の段を中心に、「枕草子」「玉勝間」との比較を通して、兼好の草木嗜好に触れてきた。この後編では「徒然草」の諸段に表われる草木のいくつかをとりあげ、各々の草木が、章段の構想のなかで、どんな意味を与えられているか、試見を述べたい。その際、特に問題となるのは、単に”木や草”などと漠然と表記されたものでなく、具体的な草木の種類を明示したものである。一三九段のほかに「徒然草」では、どんな種類の草木があるのか、少し思い浮かべてゆくと、柑子の木(一一段)、棟の木(四一段)、榎の木(四五段)、くちなし(八七段)、めなもみ草、(九六段)、桂の木(一〇四段)、杉・椎紫・白樫(一三七段)、呉竹・河竹(二〇〇段)などはじめ、他にもいくつかの草木が散見される。が、構想とかかわるもので重要なのは、説話的、物語的な章段のもので、そのうちで、ここでは、柑子の木、棟の木、くちなし、桂の木の四種を検討する。なお、この論の基底には、先に公表した「『徒然草』の虚構性」で示した考えが流れているので、あわせて参照願えば幸甚である。
ISSN
0471-4008
NCID
AN00032875
NAID
JaLCDOI