本研究は,教員養成課程で音楽を専攻する学生を対象に,入学直後に実施した声楽・合唱分野に関する意識調査の分析を行い,その実態を明らかにしたものである。
学生らは大学入学までに,特に行事に関連して集団での合唱活動を多く経験してきている一方で,個々人における学習経験は少なく,声楽や発声の技術的な面で自信がないことが明らかとなった。小中高の歌唱・合唱経験が行事中心であると,表面的な活動に留まって基礎能力が育たない可能性があり,教員養成においては個人の実技力,特に,発声法の知識や技術を育成することが第一に必要であることが示唆された。また,こうした分析結果は,先行研究における結果を再認する形となり,長年の声楽・合唱分野における課題が浮き彫りとなった。