本研究は,従来の主権者教育の課題を克服し,選挙の意義や価値について生徒自身が主体的に考える学習を通して,選挙に対する見方・考え方を身に付けることを目指した中学校社会科の授業を開発しようとするものである。従来の主権者教育は,投票の重要性を理解させ,学習者の国民として義務感を強調し,投票への意欲を喚起しようとするものであった。そのような主権者教育は,学習の直後に一時的に投票への意欲を高めることはできたとしても,その意欲を持続させることはできない。本研究では,そのような課題に応えるため,学習者が選挙制度それ自体のあり方について検討し,自分なりによりよい制度のあり方を考えることを通して,選挙の本質を捉えることができる授業を提案する。これにより,従来の義務感に訴える主権者教育から脱却する方向性を示したい。