本研究は,小学校の教育現場で器楽指導を行うにあたってどのような教授行為がふさわしいのか,尺度を新しく作成するとともにその指導内容の構造について検討したものである。調査1では教育学部に所属する音楽専攻学生と非音楽専攻学生を対象に,器楽授業を測定する尺度を作成した。調査2では演奏経験ならびに教員歴のある音楽専門家を対象に,専門的な指導事項について調査を実施した。大学生から得られたデータに対して探索的因子分析を行った結果,3因子構造であることが示され,それぞれ「クラス運営に関する規律」「楽器との関わり方」「専門的な知識」と命名された。あわせて3因子の内的整合性ならびに尺度の妥当性に関しても検証がおこなわれた(調査1)。「専門的な知識」に関しては,導入段階と応用段階で指導事項が異なることが確認された一方,重複する指導事項の存在や,個人差への対応によって段階の区別が相対的なものであることが示唆された(調査2)。