本研究は,幼稚園や保育園・所などの保育現場で歌われる保育者の歌声を採取し,印象評
価実験と音響分析により,どのような歌声が保育現場にふさわしいのか検討したものである。
音圧,ピッチ,フォルマントの各音響特徴と照らし合わせたところ,安定した基本周波数や
3~4kHz 付近の明確なスペクトルピーク,緩やかな音圧の推移が「美しい」印象を与え
ていること,第3フォルマントと第4フォルマントの接近の有無,高周波数帯域でのエネル
ギーの濃淡が,個性的な声質に影響を与えていることが示唆された。さらに大学生が判断す
る「良い」声と,子どもたちが「歌ってほしい」声との間にかなりの共通点が認められた。
保育者の歌声に関して偏ったプロトタイプが形成されることのないよう,保育現場でのお手
本のあり方について慎重を期すべきであるとの提案をおこなった。