岡山大学大学院教育学研究科研究集録
Published by 岡山大学大学院教育学研究科

ISSN 1883-2423

「ヤ(病)ム」とその派生語の語史―「ウラヤム」「ココロヤム」など―

陳 崗 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科博士課程
吉田 則夫 岡山大学大学院教育学研究科社会・言語教育学系、国語教育講座
発行日
2010-06-25
抄録
「ヤ(病)ム」は、上代以来、主として身体の異変(病気にかかるなど)を表す語である。その動詞形派生語として、「ウラヤム」と「ココロヤム」があげられる。「ウラヤム」は、上代訓読系資料に「妬む」の類義語として、強い「嫉妬」を表していたものの、平安中期頃、意味変化を生じ、「羨望」を表すようになって、現代まで用い続けられてきた。「ココロヤム」は、語構成の通り、「心が病気になったように苦しむ」の意味を表す語であり、中古に少数例のみみられる。一方、それぞれの形容詞形派生語は、「ヤマシ(イ)」のように、動詞形と異なる意味用法を呈するものもあれば、「ウラヤマシ(イ)」「ココロヤマシ(イ)」のように、動詞形とほぼ対応しているものもある。このような相違は、それぞれの語の初出当時の文体や共起表現の作用などによるものである。
キーワード
ヤム
ウラヤム
ココロヤム
心情語
語彙史
ISSN
1883-2423
NCID
AA12338258
NAID
JaLCDOI