岡山大学大学院教育学研究科研究集録
Published by 岡山大学大学院教育学研究科

ISSN 1883-2423

「兼好自撰家集」の伝本の流布状況(上)

稲田 利徳 岡山大学
発行日
1996-03-15
抄録
齢六十を越えたころ、兼好は長年にわたって書き留めてきた詠草類を整理し、家集編纂を思い立ったようである。その家集は部位を基軸に据えたものでもなく、さりとて詠歌年時配列でもない特異な配列によった、従前に類をみない斬新な編纂方針のもとで成立したのであった。そこに収録された詠歌には、二十歳代のもの、出家前の苦闘を吐露した三十歳前後のものから、編纂時に近い頃の歌まで、相当長い歳月にわたる歌を収載している。その収録歌数は二百八十余首と、さして多くはないが、かなり精選し、そこに南北朝という動乱の時代を生きぬいた一人の知識人の、和歌を介入しての生の軌跡が浮上するように企図されている。
ISSN
0471-4008
NCID
AN00032875
NAID
JaLCDOI