岡山医学会 Acta Medica Okayama 0030-1558 38 440 1926 Ueber den feineren Bau des Arcus aortae 943 948 EN Kuranosuke Kumagai 血管ノ組織學的構造ニ關スル研究ハ古クヨリ行ハレ從ツテ之ニ關スル文獻モ亦極メテ多シ. 併シナガラ之等ハ局所解剖的ニ相違ナル部位ヲ比較研究セラレタルモノニシテ例ヘバ大動脉系統ニ就テ, 血管分岐部ニ就テ, 側枝ヲ出サズシテ長ク走ル血管ニ就テ, 時々容積ヲ異ニスル臟器例ヘバ肺臟, 陰莖, 子宮等ノ中ヲ走ル血管ニ就テ等ナリ. 予ハ同一ノ部位ニ在リテモ内外ヨリ來ル種々ノ刺戟ニ依リ其ノ刺戟ニ適應スルタメニ血管壁ノ組織學的構造ニモ亦種々ノ變化アルベシト推シ海猽, 家兎, 犬等ノ動物ニ就テ檢査シ然ル後ニ人胎兒ヨリ老人ニ至ルマデノ多數ノ大動脉弓部ヲ採リテ檢シタルニ刺戟多キ彎曲ノ凸側ト刺戟少キ凹側トニ於テ果シテ組織學的構造ニ差異アルヲ認メタリ. 即チ彎曲ノ凹側ニハ内膜ニ縱走彈力纎維殆ド無ケレドモ凸側ニハ多數ノ縱走彈力纎維存在シ, コノ縱走彈力纎維ハ年齡ノ増スト共ニ其ノ數モ増加スルモノノ如シ. 一般ニ男性ニアリテハ女性ニ於ケルヨリモコノ纎維ノ發達ヨク, 筋肉勞働者ハ坐業ニ在ル者ヨリモコノ縱走彈力纎維ヨク發達セルモノノ如シ. コノ凹側ト凸側トニ於ケル彈力纎維ノ走行ノ相違ハ動物ニアリテモ同樣ノ關係存スレドモ概シテ動物ハ人間ヨリモ發達ノ度少ク, 海猽ヨリモ家兎, 家兎ヨリモ犬ノ方コノ纎維ノ發達ノ度ハ著シ. No potential conflict of interest relevant to this article was reported.

岡山医学会 Acta Medica Okayama 0030-1558 39 448 1927 Die elektrische Untersuchung der alkoholischen Nervenextraktemulsoidteilchen I. Über den Einfluss verschiedener Alkaloide auf die elektrische Ladung der Emulsoidteilchen von alkoholischem Nervenextrakt 605 613 EN Kuranosuke Kumagai 健康ナル成熟家兎ヲ速カニ殺シ大脳皮質, 脊髄前角竝ニ坐骨神經ヲ採リ之ヲ細切シテ秤量シ其ノ十倍量ノ純「アルコホル」ヲ加ヘテ5分間強ク振溢シ48時間以上室温ニ放置シテ得タル神經「アルコホル」抽出物ヲ0.9%ノ食鹽水ヲ以テ極メテ徐々ニ60倍ニ之ヲ稀釋ス茲ニ生ジタル「リポイド」粒子ニ種々ノ「アルカロイド」(「モルフイン」, 「ストリヒニン」, 「アトロピン」, 「コカイン」, 「フイソスチグミン」, 「ピロカルピン」, 「ヒニン」, 「ニコチン」)ヲ十萬分ノ一, 三萬分ノ一, 一萬分ノ一, 五千分ノ一, 千分ノ一ノ濃度ニ於テ作用セシメ薬物點加後毎10分, 1時間, 2時間, 4時間, 8時間ニ於テ顯微鏡下ニ於ケル「カタホレーゼ」運動ニ依ツテ粒子ノ電氣的運動ヲ觀察セリ. 神經「リポイド」ニ「アルカロイド」ヲ作用セシムレバ神經「リポイド」が本來有スル陰性電荷ニ變化ヲ及ボスモノナリ. 此ノ場合興奮性ニ働ク薬物ハ「リポイド」ノ電荷ヲ増シ麻痺性ニ働クモノハ其ノ電荷ヲ減ズ. 「アトロピン」, 「ピロカルピン」等モ興奮性ニ働ク薬物ト同ジク其ノ電荷ヲ増ス. 時間的ニハ薬物點加後30分乃至180分ニ於テ最モ著明ニ作用スルモノノ如シ. 濃度ニ依リテモ亦其ノ作用ニ差異アリ. 即チ最モ著明ニ作用スル濃度ハ三萬分ノ一前後ノモノナリ. No potential conflict of interest relevant to this article was reported.

岡山医学会 Acta Medica Okayama 0030-1558 39 447 1927 Beiträge zur Kenntnis der Indophenoloxydasereaktion des Nervensystems 446 454 EN Kuranosuke Kumagai 動物體ノ「オキシダーゼ」反應ニ就イテハEhrlich氏以來多數ノ人々ニ依リ種々ノ方法ヲ以テ檢査セラレタリシガ神經系統ノ「オキシダーゼ」反應ニ關シテハEhrlich氏ハ腦ニ於テAbelous及ビBiarnès氏ハ腦ニ於テVernon氏ハ腦延髓及ビ小腦ニ於テIndopbenolblausyntheseヲ觀察シ只漠然ト其ノ陽性ナルカ陰性ナルカヲ述べ微細ナル點ニハ更ニ言及セズ. 又多クノ學者Slozon, Rosell, Kliopfer,藤原,池田其ノ他ハ神經系統ニハ「オキシダーゼ」ノ存在ヲ否定セリ. 然ルニGäff氏ハ神經組織ニ「オキシダーゼ」反應陽性ナル部分アルコトヲ主張シ殊ニ神經節細胞ニハ非常ニ多數ノ「オキシダーゼ」顆粒アルコトヲ證明セリ.然レドモ其ノ「オキシダーゼ」顆粒ノ微細ナル分布状態ニ關シテハ論及スルトコロナカリキ,勝沼博士ハ1915年v. Gierke氏法ヲ模倣シテ神經系統ノ「オキシダーゼ」反應ヲ精細ニ檢査シテ「オキシダーゼ」顆粒ノ分市状態ヲ詳細ニ記載セラレタリ. 1916年Düring氏ハ病理解屍體ノ新鮮ナル材料ヲ用ヒテ中樞神經節細胞ノ「オキシダーゼ」反應竝ニ其ノ意義ニ就イテ研究セリ. 1922年Kappers氏ハ魚類ノ腦ヲ用ヒテ其ノ神經節細胞ノ「オキシダーゼ」反應ヲ檢査セリ. 予モ亦本間題ニ就イテ上坂教授指導ノ下ニ詳細ナル檢査ヲ行ヘリ. 使用セル動物ハ家兎, 犬, 鼠ニシテv. Gierke氏法ヲ模倣シテ0.025%ノα-NaphtholトDimethylparaphenylendiaminトノ食鹽水溶液ヲ用ヒタリ. 檢査ノ結果次ノ如キ結論ヲ得タリ. 予ノ行ヘル檢査ノ成績ハ大體ニ於テ勝沼博士ノソレト大同小異ナリ. 中樞神經ノ灰白質ニ於テハ最初一般ニ瀰漫性ニ青染シヤガテ神經節細胞ニー致シテ著明ナル青色顆粒表ハル. 神經細胞核ハ本反應一般ニ陰性ニシテ微細ナル「インドフェノール」顆粒ヲ以テ充タサレタル細胞體ヨリ明カニ區別スル事ヲ得. 但シ小腦プルキンエ氏細胞,脊髓神經節細胞ハ例外ニシテ核小體ニ「オキシダーゼ」顆粒テ認メ得ルコトアリ. 尚ホ又脊髓前角ニ存スル運動神經細胞ハ其ノ核小體ハ多クノ場合極メテ微細ナル青色顆粒ヲ以テ充タサレタルヲ見タリ. 神經細胞ノ細胞體竝ニ其ノ樹枝状突起ハ微細ナル極メテ多數ノ「オキシグーゼ」顆粒ニテ充タサル之ニ反シ神經突起ニハ極メテ少數ノ青色顆粒存ス. 而モ一度青染セル切片ヲ室温中ニ放置スルニ神經突起ニ存スル青色顆粒ハ樹枝状突起ニ存スルモノヨリハ速ニ消失ス. 運動核ト知覺核トニヨリテハ「オキシグーゼ」反應ニハ差異ナキモノノ如シ, 然レドモ下橄欖ニ於テハ他ノ神經核ニ比シ其ノ「オキシダーゼ」顆粒ハ形稍大ニシテ其ノ數少キモノノ如シ. 中樞神經灰白質ハ全然「オキシダーゼ」反應陰性ナリ. 脊髓神經節ニ在リテハ同一種ノ細胞ト雖モ同樣ノ「オキシダーゼ」反應ヲ呈スルコトナク其ノ度極メテ種々ナリ. 強ク陽性ニ表ハルルモノハ多數ノ青色顆粒ヲ以テ其ノ細胞ヲ充タサルルニ反シ陽性ノ度弱キモノハ只核ノ周圍ニノミ極少數ノ「オキシグーゼ」顆粒存スルノミナリ. 斯ク種々ノ程度ニ染マリタル細胞ハ何等ノ配列ノ順序ナク不規則ニ混在ス. 中樞部ニ存在スル神經終末ハ三叉神經知覺繊維ニ就イテ檢スルニ「オキシダーゼ」反應陰性ナルモノノ如シ. 軸索ハ其ノ中樞神經細胞ヲ出テ極メテ僅カノ經過竝ニ末梢部終末ヲ除クノ外凡テ本反應陰性ナリ. Piamaterハ微ニ本反應陽性ナレドモ, 夫レガ神經繊維ト交叉シテ夫レヲ中樞部ト末梢部トニ區分スル部分ニアリテハ「オキシダーゼ」反應ハ全ク陰性ナルモノノ如シ. No potential conflict of interest relevant to this article was reported.

岡山医学会 Acta Medica Okayama 0030-1558 40 3 1928 Über den Einfluss des elektrischen Stromes auf den Regenerationsprozess des Knochengewebes 578 602 EN Kuranosuke Kumagai 理化學竝ニ醫學ノ進歩ト共ニ電流ノ生物學的作用モ亦闡明トナリ醫學ノ領域ニ於テモ或ハ診斷ノ補助トシテ或ハ治療ノ手段トシテ廣ク電氣ヲ應用セラルルニ至レリ. 然レドモ之ガ骨組織ノ再生機轉ニ對シテ如何ナル影響ヲ及ボスヤニ就イテノ研究ハ著者ノ文獻渉獵ノ範圍内ニ於テハ未ダ之レ有ルヲ知ラズ.依ツテ予ハ骨再生機轉ニ對シテ電流ガ如何ナル影響ヲ及ボスモノナリヤヲ實驗的ニ證明センガ爲ニ〓及ビ鳩ニ於テ人工的ニ骨折ヲ起サシメ斷端ニ陰極或ハ陽極ヲ對向セシメテ骨ニ通電シ3乃至15日ノ後ニ所要ノ部分ヲ採リテ檢セシニ骨折際ニ起ル骨再生現象ハ其ノ何レノ場合ニ於テモ電流ニ依リテ病理組織學的ニ影響ヲ被ルモノニシテ而モ其ノ影響ハ骨斷端ニ陰極ヲ對向セシメタル場合ト之ニ陽極ヲ對向セシメタル場合トニ依リテ著シク其ノ趣ヲ異ニス. 骨膜及ビ其ノ他ノ結締織ハ常ニ陽極ニ向ツテ増殖シ分化,化骨スルモノナリ. 而シテ斷端ニ陰極ヲ對向セシムルモ將タ又之ニ陽極ヲ對向セシムルモ0.1 M.Aノ電流ヲ通ジタル場合ニハ共ニ骨再生現象ハ起レドモ對陽極骨端ニ於テ甚ダ著明ナルノミナラズ骨膜及ビ其ノ他ノ結締織増殖ノ方向ハ陰極ヲ斷端ニ對向セシメタル場合ト之ニ陽極ヲ對向セシメタル場合トニ於テ正反對ニシテ陽極ヲ向ハシメタル場合ニハ骨斷端附近ヨリ始マリテ増殖セル骨膜ハ陽極ノ方ニ向ツテ進行シ,此ノ斷端ニ對向セル他ノ骨斷端ヨリ増殖セル骨膜ト連結シテ其ノ分化ニヨリテ治癒ヲ營ムニ反シ斷端ニ陰極ヲ向ハシメタル場合ニハ其ノ斷端附近ヨリ始マリテ増殖セル骨膜ハ陰極ニ反對ノ方向ヲ取リテ陽極ニ向ヒテ進行ス.斯ル場合ニ於ケル骨折治癒ハ電流ノ作用ヲ受ケザル他ノ骨斷端ヨリ増殖シ來レル骨膜ガ陰極ニ對向セル骨折端ニ向ツテ進行シ來リ之ト結合シテ其ノ分化ニヨリテ治癒ヲ營ムモノナリ. 陽極ヲ骨斷端ニ對向セシメシ場合ニ於テ0.1乃至0.2 M.Aノ電流ヲ通ズレバ其ノ結果ハ電流ノ強弱ニ殆ド關係無ク常ニ再生現象ハ盛ニ行ハルルニ反シ陰極ヲ骨折端ニ向ハシムル時ハ斷端附近ノ内外骨膜ハ屡破壞セラルルヲ見ル. 斯クノ如ク骨再生ニ際シテ最モ早期ニ現ハレ且ツ最モ重要ナル作用ヲ營ム骨膜竝ニ骨髓腔内結締織ガ陽極ニ向ツテ増殖スル所以ハ同組織ノ陽性荷電ニ基クモノニシテ從ツテ同組織ハ陰「イオン」ニ犯サレ易ク之ニ衝突セザル方向ニ於テ増殖シ易キニ依ルモノナラン. No potential conflict of interest relevant to this article was reported.

岡山医学会 Acta Medica Okayama 0030-1558 40 1 1928 Eine neue Diagnostik der Schwangerschaft auf Grund der sero=elektrischen Reaktion 17 33 EN Kuranosuke Kumagai 1922年上坂教授及ビ關正次氏ハ免疫血清ガ赤血球,白色及ビ黄色葡萄状球菌竝ニ靈菌ノ電荷ヲ著シク減少セシムル事ヲ發見セシガ其ノ後關氏ハ此ノ事實ヲ「チフス」菌ニテモ確メ更ニ此ノ事實ニ基ケル黴毒ノ電的氣診斷法ヲモ考案セリ.予ハ進ンデ此ノ事實ヲ娠妊ノ診斷ニ應用セリ.妊娠ノ際ニ母體ノ血液中ニ種々ノ變化ノ起ルコトハ今ヤ周知ノ事實ニシテ而モ其ノ變化ヲ起ス原因タルヤ母體ニ對シテ異物タル胎兒竝ニ其ノ附屬物有ルガ爲ナル事明カナルガ故ニ健全ナル婦人ノ分娩直後ニ其ノ胎盤ヲ採リ其ノ純酒精抽出物ヲ0.9%ノ食鹽水ニテ25倍ニ稀釋シテ得タル「エムルゾイド」20分ニ非働性トナシタル妊婦ノ血清1分ヲ加ヘ少シク振盪シ3-5時間室温内ニ放置セル後更ニ少シク振盪シテ之ヲ有枠載物硝子ニ入レ電流ヲ通ジテ顯微鏡下ニ檢セシニ陽極ニ向ツテ運動スル「エムルゾイド」粒子ノ速度ハ著シク減少スルヲ見タリ.而シテ此ノ速度ノ減少ハ上記「エムルゾイド」ニ非妊婦ノ血清ヲ加ヘタル場合ニ比シ頗ル顯著ニシテ之ニ依テ妊娠ナルヤ否ヤヲ容易ニ鑑別シ得ルモノナリ.本法ヲ以テ檢査セシ妊婦ノ血清ハ悉ク陽性ニ反應シ妊娠1箇月ノ末期頃ニハ確實ニ之ヲ診斷シ得タリ.但シ本反應ハ啻ニ妊娠中ノミナラズ分娩後2, 3週間ハ陽性ニ顯ハルルモノノ如シ. 妊娠以外ニ於テ本法ニ陽性ニ反應スルモノハ葡萄状鬼胎及ビ黴毒ノミノ如クナルガ黴毒患者ノ血清ハ妊婦血清ニ比スレバ上記「エムルゾイド」粒子ノ電氣的運動ノ速度ヲ減ズルノ力猶ホ弱キガ故ニ大體兩者ヲ區別シ得ルモノナリ No potential conflict of interest relevant to this article was reported.