本実験は137Csガンマー線12KRを用い,蛹時代に照射された雄を無照射雌と交配させた際の雌の不姙現象および,その一部より孵化した2代目雄と無照射区の2代目雌の交配の際のInherited sterilityと呼ばれる不姙現象の原因を,雄・雌生殖器解剖によって検討したものである. 1.照射区の雄と無照射雌の交配における雌の不姙は,ガンマー線による精子の致死変異に起因するものより,むしろ雄生殖系の組織の機能異常に基づく不完全交尾や精子が精莢中へ挿入されないこと,あるいは精子の活動力の低下による場合が多かった. 2.それら組み合わせから孵化し得た幼虫の精巣を解剖してみると,一般にその発育がよくないものが多かった. 3.上記の幼虫が発育し羽化したとき無照射雄と交配すると完全なInherited sterilityが認められた. その原因は生殖細胞の染色体異常によるよりも雄の精巣の発育不全に基ずく不完全交尾や精子の移動機能の欠除に基ずく雌受精嚢内の無精子に起因する場合が多かった。