マウルブロン時代のヘルダーリンの多くの詩作品には、その後の彼の思想・文学活動を
形作る様々な要素が、その基本形において現われ出ている。『わが想い』(1787)では、洗
練された感性と論理に基づいて、包括的立場から自身の判断の妥当性を言明する、高度な
精神作用が確認され、『荒野にて記す』(1787)では、原初的自然との交感過程の進行に伴っ
て、詩人内部において普遍的価値規範の中核が形成されていく具体的様相を見ることがで
きる。また『月桂冠』(1788)『名誉心』(1788)『 謙遜』(1788)では、共同体が正常に機能
する為に人間一般が、そして何よりも詩人自身が引き受けねばならないとされる、精神活
動の諸範型が、その対立項と共に厳然と呈示されている。